≪もんじゅ≫の音読・書きとりコースでは、「自己表現」を普段の授業の中で取り入れています。これまでの学校の授業のように、じっとおとなしく先生の話を聞いているのが「良い生徒」というのでは、これからの時代には明らかに足りません。人の話を聞いたら、きちんと質問をして、自分の意見も述べられるコミュニケーション能力が不可欠になってきます。

 昨日の音読・書きとりコースの1年生の授業で、自己表現練習の一環として自己紹介をしてもらいました。全員が1人ずつ教室の前に立って、「わたし(ぼく)は」から始まって、小学校名と学年、氏名を大きな声で言ってもらいます(写真上)。学年が上がることに、自己紹介の内容が勉強やスポーツ、趣味など多岐にわたっていきます。
 きのうの1年生の授業では、≪もんじゅ≫に入会したばかりの生徒さんが最初、「えー、はずかしい」「いやだ、大きい声なんか出せない」と嫌がっていましたが、以前からいる生徒さんが「ぼく、最初にやる」と率先してやってくれました。入会したての生徒さんは、内心(えっ、嫌がらないんだ……)と意外そうな顔をしていました。
 私は「自己紹介してくれた友だちには、なんでもいいから質問をするんだよ。全員1つずつ質問を出してもらうからね。1回聞いた質問はもう使えないよ」と言っておきました。すると、生徒さんたちは互いに相談しながら一生懸命考えて、順番に質問してくれました。質問を決める話し合いだけでも楽しそうです(写真下)。
 「好きなテレビの番組はなんですか?」「どんな本を読んだことがありますか?」「好きな遊びはなんですか?」「好きな数字は何ですか?」「好きな色は何ですか?」「どんなところへ旅行に行ったことがありますか?」「兄弟は何人いますか?」「お母さんはやさしいですか?」などなど。
 答えに好きなアニメ番組が出るかと思ったら「ニュース」との答えで、「おぉー」と歓声が上がり、本や旅行についての答えには、「私もそれ読んだ」「ぼくもそこに行った」との反応が出ます。ある生徒さんが「うちのお母さんこわいんだよ」と言うと「うちも!」と同調する子がいて、みんな笑っていました(もちろん、お母様の愛情があふれるゆえだということをわかっているからこその笑いです)。
 最初は嫌がっていた生徒さんも終わってみると「楽しかったから、もっとやりたい」「またやりたい」と、しきりに言っていました。ふだんは教室で一緒に勉強している姿しか見ていない友だちの意外な側面が見えたり、予想外の話題で盛り上がったりと、質疑応答だけでも友人を作る上で大きな効果があります。

 大人になってから仕事や生活で必要となる話し合い・協働・共感は、このように小学校低学年からでも楽しみながら習得していくことができます。最近、学校の教育現場では「アクティブ・ラーニング(AL)」が取り入れられています。知識偏重ではない、問題解決型の思考能力を向上させる教育手法です。
 先日、そうした事例が新聞記事「答のない世界 中学入試は問う」「議論・協働…私立で導入拡大」で紹介されていました(2017年1月30日『朝日新聞』)。正解のない問題について解決法の選択肢をいくつか提示させることが、入試の作文で解答として求められます。AL教育はまだ緒についたばかりです。これからはふだんの学校の授業でも自ら発話する機会を増やしてもらいたいものです。