8月3日の当ブログで取り上げた『全珠連会報』第164号の中の別の記事(曽我和三郎「読上算(暗算)・見取算(暗算)の口数という用語の考証」)から、そろばんに関するトリヴィア情報をご紹介します。
そろばん競技には、いくつかの種目があります。紙に印刷された数字を計算する見取算(みとりざん)、指導者が口頭で読み上げていく数字を計算する読上算(よみあげざん)、大きなスクリーンに映し出される数字を計算するフラッシュ暗算などがあります。
読上げ算では必ず最初に「願いましては」から始め、「○○円なり、○○円なり、○○円なり・・・」と数字が続き、最後は「○○円では?」となります。生徒が答えをその場で言う場合、正解なら指導者が「ご明算(めいさん)!」と言います。
よく「読み・書き・そろばん」と言われるので、そろばんが読み・書き同様に寺子屋で教えられていたかのようにイメージされますが、指導者が生徒に出題するのに、あたかもお願いするかのように言ったり、お金を数える「円」で数字を読み上げたりするのはなぜなのでしょうか。
曽我氏によれば、かつて大店(おおだな)で番頭が読み手となって、丁稚(でっち)たちに帳簿の計算をさせたそうです。その際に「願いましては」で始めたようです。つまり、読上算の始まりはあくまでも商家であって寺子屋でないとのことです。
ちなみに、そろばんでは、計算する数字は1つめが1口(ひとくち)、2つめが2口(ふたくち)と言います。現在でも寄付などに「1口○○円からでお願いします」と言うのと同じですね。そろばんの読上算では、「5ケタ、6口の足し算をやります」などのように用います。
こうした江戸時代を思わせる読上算の用語が、いまだにそろばん競技で残っているのは不思議な感じがしますね。でも、そろばんが日本の伝統技能の1つであることを思い起こさせてもくれます。
門樹