≪もんじゅ≫の音読・書き取りコースでは、算数・国語・理科・社会・英語の知識をまんべんなく取りあげて、テキストにしています。3年生の7月のテキストでは、星座「夏の大三角・冬の大三角」を勉強します。夏の大三角とは、こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブの3つなのですが、こと座を説明するために、ギリシャ神話を改めて読み返しました。不思議なことに、こと座の物語と、日本の古事記に書かれている黄泉(よみ)の国の話が非常に似通っていることに気づきました。

こと座の伝説の主要な登場人物は、芸術の神アポロンと、アポロンの息子で竪琴(たてごと)の名手オルフェウス、そしてオルフェウスの最愛の妻エウリュディケ、さらには死の国の王ハデス、死の国の宮殿の番犬ケルベロス、全能の神ゼウスなどがいます。どこかで聞いたことのある名まえばかりですね。こと座が星座としてできた物語は次のようなものです。

エウリュディケが毒蛇にかまれて死ぬと、夫のオルフェウスは妻を死の国から連れ戻して、妻を蘇らせようとします。オルフェウスは得意の竪琴の音色で王ハデスや番犬ケルベロスを籠絡させると、暗黒の中で妻エウリュディケとともに死の国の出口へ向かうことができました。しかし、死の国から妻をつれだすには、「自分の後ろをついて来ているはずの妻を振り返って見てはいけない」という条件が付いていました。その禁を破って、つい後ろを振り返ったオルフェウスは、妻の救出に失敗し、後悔と悲しみの余り、死んでしましました。オルフェウスを不憫に思ったゼウスは、彼の竪琴を拾い上げて天空に飾り、それがこと座になりました。

古事記でも、イザナキが死んだ妻のイザナミに再び会おうとして黄泉の国へ行きました。イザナミは黄泉の国から出られるか否かを黄泉の神々と相談しますが、「その間に私の姿をのぞき見ることはしないでください」とイザナキに言いました。しかし、なかなか戻ってこないイザナミが何をしているのか心配になり、イザナキはつい妻の様子をのぞいてしまいました。その結果、イザナキは妻を連れ戻すことに失敗してしまいました。妻が自身の異形の姿を見られたくないがゆえに、自分を見ないよう夫に懇願したにもかかわらず、妻を一目見たいとの夫の思いが妻との約束を破ってしまったのです。互いを思うがゆえの悲劇は、民話「鶴の恩返し」にも通じています。

古今東西、神話や民話はどこの国もいくつかのパターンで共通していて、それらは研究者によって類型化されています。ドラマ化される人間模様は、時代、民族を超えて、共通しているのでしょう。≪もんじゅ≫の音読・書き取りテキストでは、古事記、聖書、ギリシャ神話なども一部取り扱っています。神話を教養として知るだけでなく、学校で学ぶ知識や歴史の背景・思想ともなっていることを理解してもらえるよう、テキストを作成しています。≪もんじゅ≫の教室では、オルフェウスが洞くつ探検で竪琴を片手にしながら悪者たちをやっつけたにもかかわらず、最後には、エウリュディケを救いきれずに死んでしまい、その竪琴が空に浮きあがって星になったと、演技を交えながら話すと、子どもたちに受けていました。

 

門樹