≪もんじゅ≫は、進学塾でも補習塾でもない新しいタイプの現代版寺子屋です。いちばん頭がやわらかい小学生の時期に、知識偏重教育をしてはもったいないです。知識を蓄えることは必須ですが、それを使って楽しむことも同時に知らなければ、勉強の意義を見失ってしまいます。そこで≪もんじゅ≫では、毎年春休みと夏休みに、≪もんじゅ≫会員の生徒さんと会員でないお子さんを対象に、≪もんじゅ≫が開講している3コース「音読・書きとりコース」「そろばん・暗算コース」「作文・読書コース」に即した内容で、聴講ではない生徒参加型の授業を3日間、午前・午後それぞれ2時間ずつの講習を実施して、勉強の楽しさを体感してもらっています。
おかげさまで、今年の春期講習は3月25~27日の3日間の日程で好評のうちに終えることができました。以下にいくつかのクラスの内容を簡単にご報告します。
3月25日(水)午前に実施したクラス「百人一首と俳句をリズムよく音読してみよう!」では、まず最初に、今どきふうのイケメンと美女が登場するマンガ『超訳百人一首うた恋い。』(杉田圭、メディアファクトリー)の中から、百人一首の選者である藤原定家が恋と人生に悩みながら、和歌を書いた百枚の色紙を小倉山荘の障子に貼り付けていくくだりを読ませました。百人一首が編まれた経緯を、小学生でもマンガだと理解しやすいからです。
生徒からは「今でもこの小倉山荘ってあるんですか」と質問があったので、「もう現物はなくなっているけど、その小倉山には百人一首の博物館みたいな建物があるよ」と教えました。そして、京都にある百人一首の殿堂「時雨殿」に、わが家が旅行で行った時の写真も見せました。
次に、天智天皇、持統天皇、阿倍仲麻呂、小野小町らの和歌10首を大きな声で音読してから、その10首でカルタ取りをしました。カルタになると子どもたちは熱くなります。最後の1~3枚くらいになると、お互いに体をカルタ近くに寄せ合って、読み手が札を読んだ瞬間に勢いよく手を伸ばして取る準備をしていました。百人一首カルタで遊ぶ機会がほとんどなくなった昨今、付け焼刃でも和歌を頭に叩き込んで札を取り合うのは、子どもにとって体を使うゲームみたいで新鮮だったようです。
俳句は、江戸の三大俳人である松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶の俳句を2句ずつ音読してから、それぞれの句が描く場面を自分の言葉で説明してもらいました。「古池や かわず飛び込む 水の音」「菜の花や 月は東に 日は西に」「やれ打つな 蠅が手をすり 足をする」など、遠景、近景を問わず、目の前に情景がまざまざと浮かぶものばかりです。子どもたちは、身ぶり手ぶりを交えながら歌われた状況を説明してくれました。
最後は、実際に皆で俳句を作り、色紙に筆ペンで書きました。自分の楽しかった経験を場面設定すること、そして「うれしかった」「かなしかった」「がんばった」など自分の感情を説明する言葉を直接入れなくても、句を読んだ人が臨場感あふれる描写により自然と共感を得られるように言葉をつむぐことを留意させました。(今回は情景描写を重視して、特に季語を盛り込むことについては指示をしませんでした。)
雪合戦を題材にした子の「雪の玉 しもやけの手で かたくする」という句からは、雪の冷たさと雪遊びの楽しさが伝わってきます。運動会の徒競走で一等賞をとった子の「ぬかれるな ゴールの線まで もうすぐだ」には、ゴールテープ直前での必死さがわかります。学校でのドッジボールを歌にした子の「昼休み ボールであてる ライバルを」には、男の子らしい負けん気が表現されています。
日本の古典文学を鑑賞する心を持つことと、それを現代でも作文技法として活かすことは大切です。音読して日本語のリズムを体感し、場面を想像しながら自分で句を作る。年少期の言の葉(ことのは)遊びが、日本人としての心を豊かにしてくれます。子どもたちが書いた直筆の俳句は、額に入れて教室に飾りました。