今月開塾した≪もんじゅ≫の「そろばん・暗算コース」は、おかげさまで何人もの新しい生徒さんに入室していただくことができました。感謝申し上げます。
今回は改めて、≪もんじゅ≫が今の時代に「そろばん」にこだわる理由を、2回に分けてご説明させていただこうかと思います。

現在40歳台以上の方なら、子どもの頃に「そろばん3級以上を持っていれば就職に役立つ」と言われ、そろばん教室へ通った経験をお持ちの方が少なくないでしょう。しかしその後、電子卓上計算機が普及したために、そろばんを使ったり暗算をしたりする必要がなくなりました。さらに今や、複雑な数式による計算をコンピューターソフトが代行してくれる時代になりました。それでもなお、そろばんを習う意味はあるのでしょうか。もちろん、答えは「ある」です。それは、そろばんの本質が、単なる手動の計算機などではなく、数理処理システムを最も容易に幼少期の脳にインストールすることができる教育ソフトだからです。

小学校の算数が、1年生のたし算・ひき算に始まり、2年生のかけ算、3年生のわり算・分数になってくると、指を折って数えていた計算では到底追いつかなくなり、算数に対する苦手意識を持つことになる子どもが続出します。小学校1年生の時にはおハジキや黒板の丸磁石を並べて理解できますが、2ケタ以上になってくると、そうした物では扱えなくなり、かけ算九九のような「呪文」に至っては、もう何を意味しているのかわからなくなってしまいます。ところが、そろばんには、1の位、10の位、100の位、1000の位に相当するタマの列があり、各列が5のタマ1つと1のタマ4つによって、数字を可視的に表現できるようになっています。おハジキや丸磁石をコンパクトにまとめて数十ケタの数字まで示せるようなものです。目で見て、数の組成、10進法、ケタの繰り上がり、加減乗除の仕組みがわかるのです。

そろばんは、「数の仕組みがわかるようになる」という段階にとどまらず、数ヵ月練習をすれば、まさに計算機を脳内に導入することができるようになります。よく、そろばん経験者は口をそろえて「そろばんが頭に浮かんでくる」と言います。目の前でそろばんのタマを弾くことを反復していると、その計算システムが視覚を通じて頭に繰り返しインプットされる結果となり、目を閉じてもバーチャルなそろばんが自動的にタマを弾いて計算をしてくれるようになります。そろばん有級者なら複数ケタの複雑な計算を一瞬にしてこなすことができるのは、そのためです。筆算で数段にわたって数字を書き出して一つ一つ計算していくうちに「ケアレスミス」が起きてしまうのとは、計算の効率がまるで異なります。感覚的には、数字を入力すればすぐに答が出る電卓とほとんど変わりません。
(続く)