左上の写真は、ライチョウ展示場のパネルを写しているK君です。展示パネルそのものが資料として使える情報となっているので、それぞれを1枚ずつ撮影しています。右側の写真のパネルは、クイズ形式でニホンライチョウの基礎知識を提供しています。左下のポスターは、ライチョウ保護のための呼びかけと啓蒙です。動物園のスタッフさんたちが保全活動の一環として何を人々に訴えたいのか、来場する子どもたちに知ってもらいたいと努力されている想いが、展示場のそこかしこから伝わってきます。

 K君は1ヵ月以内に今回の調べ学習を「絶滅危惧種ライチョウ――上野動物園の保全活動」としてレポートにまとめ、学校へ提出します。次のゴールデンウィークには、お母様の実家の近くにある富山市ファミリーパークへ行って、そこでのライチョウの保全活動を調査に行く予定です。今回の上野動物園は、私が各所に電話連絡をし、資料収集と質問の作り方を指導しましたが、富山ではすべてK君が自分で計画を立てて実施します。

 日本で勉強と言えば、入試と定期試験対策のための単純な暗記ばかりです。でも、それでは勉強の面白さは半減してしまいます。勉強は面白くなければいけません。≪もんじゅ≫では、生徒の興味あるテーマを定め、資料収集、疑問点のリストアップ、現場視察、関係者インタビューなどを通じて報告書を作る指導をしています。保護者のサポートも加われば、小学生でも大人顔負けの調査報告書を作成できます。

 近年、入試で教科横断型問題や記述式解答が増えています。それに伴い、そうした出題方式の対策をする進学塾や受験生も増えるでしょう。しかし、入試のために資料分析と作文を別々に切り離して訓練することは、私に言わせれば本末転倒です。点数を取るための勉強では、勉強の本質が失われてしまいます。自らの知的好奇心が介在しなければ、知の大海へ飛びこもうとは思いません。それは行き先の見えない苦痛な作業です。

 まず自分が興味あることに関して猛烈に資料を読み漁ります。資料から論点を抽出して、それに詳しい大人と対話をし、それらを文章化します。そうした機会を与え導くことにより、子どもの好奇心をひき出し、知的能力を高められます。そして、その経験こそが入試対策になると、≪もんじゅ≫は考えます。入試の面接で、自分が手がけたリサーチ活動で知ったこと、体験したこと、出会った専門家たちについて生き生きと語ってもらいたいです。