8月1日(日)午後2時から≪もんじゅ≫の教室でオンラインセミナー「新しい英語教育と入試対策」を開催しました。今回は先日の簡単なご報告に関する詳細をお伝えいたします。

パネリストは当教室で教える高橋門樹と、教室の生徒さん2名(玉川学園高等部IBのMYP10年生とUWC ISAK高校1年)の3人、司会進行は高橋直美でした。

まず、高橋門樹は「日本の英語教育の変化と入試の多様化」というタイトルで、小中学校の英語教育の変化と学校教育全般と入試方式の改編についてお話しました。公立小学校では2020年度に5・6年生の英語が正式な教科となり、成績評価がされるようになりました。中学校では2021年度に教科書が全面改訂され、文科省が定める中学校卒業までに修得すべき英単語数がそれまでの1200語から2500語と倍増しました。そのため新中学校1年生の教科書は、小学校ですでに勉強した700単語と英語フレーズを前提にして、進度が速く量も増えました。そして、大学センター入試に代わって2020年に始まった基礎学力入試では、英語におけるリスニングの比重がリーディングと全く同率となり、それにあわせて中学校教科書でもリスニングのページが大幅に増えました。これまでのような音声学習なしで単語を覚え、文法を勉強する英語学習では太刀打ちできないものとなっていることを指摘しました。

入試も変わりつつあります。つい先日、東京都の行政広報紙に掲載されたのは、全国初となる公立小中高一貫校である都立立川国際中等教育付属小学校が開校することと、都立トップ校の1つである立川高校が都立初の理数学科「創造理数科」を開設し、その入試が来年始まることでした。前者は帰国子女を多く受け入れ、英語による授業を開講します。後者は、日本をけん引する科学者の育成を目指し、英語によるリサーチとプレゼン、ペーパー作成を予定しています。今後、英語力が入試や仕事で、これまで以上に大きな武器となる時代となりつつあります。英語で授業を行い、プレゼンをする学校は、すでに町田市内にもあります。玉川学園IBクラスがそれです。そちらには現在≪もんじゅ≫の3人の生徒さんが通っています。また、今年の8月から軽井沢にある全寮制のインターナショナルスクールUWC ISAK高校に進学予定の生徒さんもいます。そこで、2人の生徒さんに2校の紹介をしていただきました。

現在IBに通う生徒さんは「国際バカロレア(IB: International baccalaureate)の英語教育」と題して、IBの仕組みと学習内容、そして自分が現在取り組んでいる課題について話をしてくれました。IBとは1968年にスイスのジュネーブで設立された教育機構で、全世界の大学に進学するための共通授業を展開しています。日本でも近年、IB校出身の受験生を「IB枠」として採用する入試方式を設定する大学が、東京大学をはじめとする国公私立で増えています。英語で授業を行うにあたっては、DP: Diploma Program(高校2~3年)だけでなく、MYP: Med Year Program(中1~高1)を設けている学校があり、この生徒さんは中学のMYPからIBで勉強しています。IB教育の特徴は、日本のような暗記中心ではなく、リサーチとプレゼン、討論の後、ペーパーにまとめるところにあります。さらには、社会貢献としてボランティアを重視しています。社会を改善するための、行動力を伴った知力の育成が目標の1つです。 

彼女は現在、学校の課題「パーソナルプロジェクト」に取り組んでいて、8月1日のセミナーでもそのことについて触れました。これは生徒が学術的課題を自ら設定し、リサーチや体験・活動を通して成果物に仕上げ、それに対する周囲の反応も含めて評価されるものです。この生徒さんはその後、成果物を動画にまとめ、YouTubeで一般公開しました。その動画では、言語の学習方法とコミュニケーション、さらには文化的背景と社会性などついての考察を展開しました。彼女は第3言語として中国語を今年に入ってから学び始め、中国政府認定の中国語能力検定HSK(漢語水平考試)の1級を受けて合格し、8月に2級も受検しました。全篇、彼女自身が英語でナレーションをしている本動画には、専門家からもコメントを受けました。

また、この9月からISAKに入学する生徒さんは「UWC ISAK JAPANとは?」のタイトルで、世界的な教育機関UWC (United World College)と提携するISAK(アイザック)という2014年に創立されたばかりの高校について説明したほか、ISAK入試に合格するために行った準備を話してくれました。彼は中学校の生徒会長として、数々のイベント企画とルールの変革に携わってきました。カンボジアに物資を贈る国際ボランティア「ありがとうプロジェクト」を実施したほか、頭髪や服装などに関する「ブラック校則」の改定、パラリンピック開催年に当たって都庁の関連部局を生徒会で訪問して取材、それを動画に編集してユーチューブ公開したことなどを実現してきました。そんな時に、NHKの番組でベストセラー書籍『サピエンス全史』の著者がISAKの高校生たちと討論しているのを見ました。彼は「この高校に行きたい」と思い、入試の準備を始めました。

入試願書は膨大な量の質問に英語で筆記回答するほか、英語による自己紹介動画撮影もありました。一次審査に合格した次はウェブ面接です。映し出される自宅の部屋は「彼自身」が一目でわかるよう、空手道着を壁に掛け、空手大会のトロフィーと愛読書の『サピエンス全史』を見える位置に置きました。面接は教師によるものだけではありません。先輩となる在校生たちも、オンライン・アクティビティを通じて受験生を評価します。何を聞かれても大丈夫なように英語による想定問答を40題ほど作り、暗記しました。ご両親の面接もあり、お2人とも想定問答を作成し、長時間にわたる面接をこなされました。そして、結果は見事、合格です。単なる学力テストとは異なる、全人的資質と社会貢献の実績が試される入試でした。彼はつい先日、9月から新学期が始まるISAKに入寮しました。全世界から集まる俊英たちとともに様々な国際問題を学習し、世の中の「チェンジメーカー」として羽ばたいてくれることを期待しています。