今年4月に小学6年生と中学3年生を対象に文科省が実施した全国学力調査の結果を、8月1日にマスメディアが一斉に報道しました。中でもセンセーショナルに取り上げられたのが、中学3年生の英語スピーキングテストの惨憺たる結果です。5問すべて不正解だった生徒がなんと6割あまりもいたのです。半数以上の子どもが1問も答えられないというのは、一体どのような試験をしているのか、との疑問が自然に湧きあがります。

 試験問題はネット上で公開されています。例えば、絵が示され、動物園で最初にゾウを見ていた「あなた」と友だちは、次にどこへいくでしょうか?と質問しています。実際の問題で英文は示されず、あくまでもイラストと音声だけです。解答例は “We are going to see kangaroos next.” です。 決して難しい問題ではありません。とはいえ、文章で読めば答えられても、文字なしの音声だけの質問に即答できるでしょうか。また、周囲に友人たちがいるため、PC端末に向かって大きな声で英語を話すことに躊躇してしまう人もいるでしょう。あるいは、登場人物の次の予定を吹き出し中にイラストで描いてあるのを英語に言い換えるという、英検3級以上の2次試験ではおなじみの問題形式が、それまでそうした問題を見たことのない中学生が初めて見た時に、設問の意味を理解できない可能性もあります。

 第5問の難問は簡単な紹介にとどめます。ニュージーランドからの留学生が、いくつものデータや図表を用いて日本のレジ袋使用を英語で批判し、それについてあなたはどう思いますか?と問います。公開されている模範解答を日本語に訳せば、「私はあなたの意見に賛成です。日本人はニュージーランド人のようにレジ袋を使うのをやめるべきです」というものです。解答自体はそれほど難しくありません。「日本人だってエコバッグを使っているよ」との反論はあるでしょうが、それはさて置き、そもそもこうした応答を学校の英語授業でしているでしょうか。英語に限らず、日本の教育は教科書や先生の言ったことを丸暗記して解答するのが正答であり、自分の意見を自由に述べる練習はほとんどされていません。授業と採点に手間がかかり、教科書が終わらなくなるからです。それにもかかわらず、公的試験では自分の意見を英語で述べることが求められます。

 結局のところ、リスニングとスピーキング、そして英作文の練習を、普段から家庭または塾で行っているかどうか、そして英検対策の勉強をしているかにかかっていると言ってよいでしょう。学校で習ってもいないような英語スピーキングテストを一律に課すのはおかしい、との考えは自然です。しかし、大学入試をお子様が最近経験された保護者の方はご存じのことと思いますが、近年、入試の英語が急激に難化しています。そして国公立か私立かを問わず、入試で英語は必須科目です。英語が合否を決めるといっても過言ではありません。好き嫌いの問題ではなく、小学校時点から英語学習を始められることを強くお勧めします。