都立高校入試の1科目として初導入される英語スピーキングテスト「ESAT-J」(English Speaking Achievement Test for Junior High School Students:イーサットジェイ)が、11月27日(日)に実施され、約7万人の都内公立中学3年生たちが受けました。ESAT-Jの不受験者は都立高校入試のペーパーテストで同点の受験生の平均点を入試で付けてもらえることになっていたり、追試が実施されたりなど、制度的不備が多く指摘されています。防音のための耳当てをすることが義務付けられていても、実際には「隣の人の声がまる聞こえでした」など、実施段階での改善点も多々あります。しかし、都教育委員会がESAT-Jを逐次改善しながら継続することは、ほぼ確実と思われます。≪もんじゅ≫では、リスニング・スピーキング力を伸ばす機会としてとらえて対応します。

出題内容はA~Dの4つに分かれており、Aが文章音読2問、Bがひと言もしくは1フレーズで解答する問題が4つ、Cが4コマのイラストを1コマごとに描写する問題が1つ、Dは身近な問題に対する自分の考えを3~4文で回答する問題が1つです。私が問題文を検討したところ、使用された単語自体は中学校の範囲に収まっていますが、Aでは教科書本文ではない小さな欄で出てきた単語や、中学の学習範囲を逸脱した文法(助動詞+完了形)を用いた文章があるなど、普段から中学英語を超えたレベルの英語を勉強していないと不慣れな英文を音読することになっていました。

Bは、イラストを見ながら、「それはビルの2階にあります」、「それはスキー・イベントです」、「わたしは洗車をしたいです」、「わたしたちはお昼ごはんを動物園で買えますか?」などと英語で回答する問題です。簡単そうですが、「スキー・イベント」と言う時に “ski event”なのか “skiing event”なのか迷いそうですね。都教育委員会が例示する解答例は“skiing event”です。

C(右図)では、1コマめ「私は昨日電車に乗った」、2コマめ「花を口にくわえた小鳥が電車の中に飛んできた」、3コマめ「その鳥が私の隣に置いた私の麦わら帽子の上にとまった」、4コマめ「その鳥が花を私の麦わら帽子の上に花を置いて飛び去った」という状況を英語で話します。「電車に乗る」、「花を口にくわえた鳥」、「帽子の上にとまる」など、前置詞や動詞は何を使えばいいのだろう、と考えてしまいませんか。これらをすべて30秒の準備時間の後に英語で話さなければいけません。

Dは、英語音声の「みなが同じものを食べるスクールランチと、自分で食べたいものを選べるランチと、あなたはどちらがいいですか?」という質問に、理由をつけて自分の意見を語ります。前者は給食を指しているのでしょうけれど、後者については都教育委員会がホームページでESAT-Jの練習問題として挙げた例題では、弁当を“bento”と表記しているので、弁当ではない選択形式の昼食を指しているのかと疑問に思います。恐らく受験生は悩んだ末、「私はスクールランチが好きです。なぜならスクールランチは栄養バランスがよく、安いからです。毎日違うメニューが食べられるので、スクールランチがいいです」、または「私は自分で選べるランチが好きです。自分で選べる方がすべて食べられて残飯がでないからです。好きなランチを食べれば、楽しくなります」のような英文を瞬時に考えて話さなければいけません。

いかがでしょうか。これらの文章自体は決して難しくありませんが、まずリスニングができないといけません。英語音声で流される質問を理解できることが最初の関門です。実際に英語でこうしたやり取りをする機会は、日常の中学校生活ではほぼありませんし、英語教科書にも載っていません。ただし、東京都教育委員会のホームページには、4コマイラストの説明練習問題があるほか、日本文化・社会・学校生活に関する多くのテーマと解説動画が字幕付きで説明されています。書店では一問一答式の英会話集も発売されています。≪もんじゅ≫ではESAT-J対策の講座を、冬休み・春休み・夏休みの短期集中講座で年に数回開講することを計画しています。ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。