入試がかつてのような筆記による学力重視の一般入試から総合型選抜や学校推薦など多様性を増していることはご存知かと思います。そして近年、この後者の2つの割合はますます増えています。≪もんじゅ≫では、この時代の流れに沿って、書く・話すといった自己表現を重視し、さらに一人一人が自分だけの強みを身に着ける受験指導に力を入れています。

ICT(情報通信技術)の発達により、ネット上で情報を収集し、エクセルで演算する能力が求められる時代になっても、最終的には商品やサービスの内容を文章で書きあげ、口頭で説明、人に理解してもらう必要があります。2年余りのコロナ禍でオンラインの便利さは誰もが実感した反面で、やはり時には対面での意見交換や紙面でのやりとりが必要であることも痛感されていると思います。これからの教育ではデジタル技術とともに、こうした口頭や文章による表現能力が肝要となりつつあります。

今年2022年の中学入試では、男子御三家の1つ、麻布中学の出題が話題になりました。以下に一部を抜粋します。「日本に逃げて来た人たちの難民審査は厳しく、問題視されています。次にあげる資料1は審査のときにきかれる質問内容の一部です。日本政府がこのような質問をすることは、難民を保護するという点から見たときにどのような問題があると考えられますか」。これは単純な知識の有無を問う問題ではありません。論理構成力と社会感覚が必要となります。

また、最難関校の1つである武蔵中学の入試問題では、冒頭「みなさんはなぜ学校で勉強をするのかについて考えたことはありますか」との問いかけに始まり、教育に関する憲法の規定、幕末から近代、現代までの日本の教育史、そして外国の教育制度を詳述した問題文を読んだ後に、最初の質問「江戸時代に読み書きそろばんを教えた教育機関の名前を答えなさい」のほか、「戦前の日本では女性にどのような社会的役割が求められていましたか」、「平等に教育を受ける権利は憲法で保障されていますが、実際には様々な格差があります。その格差の例を挙げ、現在どのような対策がとられているか、知っていることを書きなさい」といった論述問題が出題されています。ジェンダー問題や教育格差について書けなければいけません。このような問題意識が中学入試にあたって問われるようになってきたのです。

さらに、近年提唱されている「STEM教育」をご存知でしょうか。S=科学、T=技術、E=工学、M=数学の略です。ざっくり言えば、理系重視の教育方針です。先述の通り、ICTの浸透がコンピューター技術の習得を必須にしつつあり、それら理系科目の基礎となる数学の重要性が着目されています。そのため、理系のみならず、文系でも近年、いくつかの大学の経済学部は入試科目で数学を必修にしました。統計や財務諸表などの数字が読めないのでは経済分析やビジネスプランの構築ができないからです。資料を読んで考え、自分の考えを文章で表現し、数字に強くなることが、これからの教育の中心になっていきます。