今年の6月から正式に当教室で「個別指導コース」を開設したところ、受講生の小中学生に英語を教えることが予想外に多いことから、英語教育について考えることがよくあります。そこで、実用英語技能検定(英検)についての新聞記事を目にしましたので、少し調べたことと考えたことを書いてみました。
小学生の英検受験者が増加しています。2ヵ月ほど前の2016年9月13日に、公益財団法人日本英語検定協会が発表したデータによると、文部科学省の新学習指導要領で小学校5・6年生の外国語活動が必修化された2011年度に英検受験をした小学生は193,711人だったのが、4年後の2015年度は240,819人と24%増加しています。英語学習の必修化が小学生の英検受験を促していると言えるでしょう。 http://www.eiken.or.jp/eiken/info/2016/pdf/20160913_pressrelease_child201601.pdf
このデータで興味深いのは、小学生の中でも低学年ほど増加の傾向が大きいことです。上記の2011年度と2015年度の比較で言えば、6年生の英検受験者数が16%増であるのに対し、1年生は55%増と6年生の3倍以上です。まだ必修化されていない低学年のうちに英語学習を始めて、本格的な英語学習が開始される中学校でわが子の優位を確保しようとする親御さんの意向が見て取れます。
2015年度第1回検定試験と2016年度第1回検定試験の1年間の受験者数の級別推移の数値も公表されています。小学生の受験者は、5級6.3%増、4級10.7%増、3級16.7%増、準2級17.8%増と伸び、2級は12.9%増と落ち込みます。この数値は、2011年度の外国語活動必修化で準備を始めた1年生が2016年に6年生となって、2級受検にまでは到達しにくいけれども、準2級受検レベルまで達した小学生が非常に多いことを示しています。
かつては英検2級に高校生で、英検準1級に大学生で合格すれば優秀と言われていました。しかし、2011年度に小学校に入学した子どもたちにとっては、すでに前述の通り小学校6年生までに英検3級・準2級を受検することが特殊ではなくなってきています。こうした動きは今後ますます拍車がかかるでしょう。近い将来、3級に小学生で、2級に中学生で、準1級に高校生で合格する子どもたちが珍しくなくなることが予想されます。
2016年11月10日の朝日新聞の記事には、2015年度の私立中学受験で「英検優遇校」が全国で60校あったことが紹介されています。国語・算数・社会・理科4教科受験の満点400点に、英検の合格者は級によって加点ができる受験システムになっています。私立中学の入試担当者は「小学校の時から英語を頑張っている子にも、ぜひ入学してもらいたい」と語っています。 http://www.asahi.com/articles/ASJC145C5JC1UTIL020.html?iref=comtop_list_edu_n01
近年、日本の若者の内向き傾向が指摘されてきましたが、現在の小学生を中心に英語を得意とする次世代層が出現しつつあるのは歓迎すべき動向です。人口減少、経済の縮小を打開する策として、グローバリゼーションの波を受け入れざるを得ないのは必然です。極端なグローバリゼーションが、英国のEU離脱や米国のトランプ・ショックに似た状況を引き起こす可能性については別稿で論じるとして、移民排斥を叫ぶよりは、隣邦や外国人と上手にコミュニケーションをとれる人材を育成することの方が賢明であることは言をまたないでしょう。
(高橋門樹)