≪もんじゅ≫の音読・書きとりコースでは、毎回50分間で小学生対象に、①漢字・アルファベット、②算国理社英5教科の基礎知識、③語彙・教養の3つの内容を勉強します。先日は4年生の授業で教養的知識として、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の「私には夢がある(I have a dream)」の一部を日本語で音読し、解説しました。

 キング牧師は1950~60年代のアメリカ公民権運動の中心的人物です。アメリカでは1863年にリンカーン大統領によって奴隷解放宣言がなされましたが、約100年が経っても白人によるあからさまな黒人差別は変わっていませんでした。1955年アラバマ州モンゴメリーで、キング牧師は白人の差別に対する抗議として黒人たちによるバス乗車拒否事件を計画しました。この運動は南部諸州に拡大し、米連邦最高裁判所で勝利しました。

 キング牧師の手法の特徴は非暴力でした。インドのガンディーに倣ったものです。自己主張はするけれども、あくまでも平和的な言葉と態度を用い、暴力的な衝突を避けました。1963年8月、20万人が参加したワシントン大行進で、「私には夢がある。それはいつの日か、私の4人の幼い子どもたちが肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である」というフレーズを含む伝説的な演説をしました(写真)。

 この演説を受けて、キング牧師は1963年末『タイム』誌の「パーソンズ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、64年には当時史上最年少でノーベル平和賞を受賞しました。しかし、68年に白人により暗殺されてしまいました。彼が命に代えても貫いた非暴力主義と正義を実現しようとする意志、そして言葉の力は、時代や国を超えて知っておくべき価値だと考え、音読テキストに入れています。

 授業ではキング牧師の演説を日本語で音読する前に、彼の映像を見ました。ワシントンに集まった人々を前に朗々とした声で「I have a dream!」と何度も繰り返す姿は、感動的です。映像を見ながら、生徒さんたちはキング牧師が「I have a dream」のフレーズを口にするたびに、私が指示をしていないのに一緒に英語でリピートしていました。歴史を無味乾燥な活字情報として暗記するのではなく、生きた偉人の姿と言葉もともに記憶にとどめてもらえたら嬉しいです。

(高橋門樹)