≪もんじゅ≫では、生徒さんによく辞書をひいてもらいます。国語辞典、漢和辞典、英和・和英辞典、各種事典などなど。冊子体の辞書と電子辞書のどちらを使うべきかを論じると長くなるので、それは別稿にゆずりますが、≪もんじゅ≫では、少なくとも小学校のうちは冊子体の辞書を中心に使った方がよいと考えています。
実際に子どもたちに冊子体の辞書を使わせると、目的の言葉が載っているページまでなかなかたどりつかない子が大半です。年齢が上がるほど電子端末を使うことが多くなりますが、50音順の見出しや索引を使えないのでは、冊子体の辞書・事典類で調べ物をすることができません。それでは困ってしまいます。
添付の写真は、≪もんじゅ≫の音読・書きとりコースの小学校4年生が、同音異字(以上・異常・異状、関心・感心・歓心など)や同訓異字(開ける・明ける・空ける、熱い・暑い・厚いなど)の言葉を、国語辞典を使って調べているところです。身を乗り出して辞書をのぞきこんでいますね。
今回は2人ずつ組んで調べてもらいました。興味深いのは、チームの中で「もっと前のページだよ」「こっちの漢字かな」などと、助言と協働が自然に出てくることです。特に競争はしていないのですが、相手チームがいくつめまで調べ終わったかを気にして、効率を上げるための連携作業をチーム内でするようになります。
答え合わせは、ホワイトボードに2人ずつ書いてもらいます。写真で書いているのは「動物が鳴く」と「人が泣く」です。みんなの前で字を書く段になると、今度は同じチームの間でもう1人の子の字が気になって、隣りをチラチラ見る子がいます。たいていの子はいつもノートに書くよりも、ホワイトボードだと丁寧に大きな字を書きます。
この日は30個の言葉を調べました。終わるころにはみんな辞書の使い方を覚えて、1つの言葉を調べるのにかかる時間がだいぶ短くなりました。そして、チームスポーツでもやったかのような仲間意識と軽い高揚感が味わえ、人前で緊張しながら見やすい字を書く経験ができました。時にこうしてチームを組んで勉強をすると、1人ではできなかったことができるようになることがあります。
冊子体の国語辞典の良さは、一覧性にすぐれているところです。同じページに同音・同訓異字語が並び、それらの意味や例文を読み比べて選ぶことができます。友だちと「こっちだ」「ちがう、こっちだよ」などとやりあいながら、内容を改めて読み直すこともあります。1語ずつしか表示されない小さなモニターの電子辞書ではこうはいきません。
高校生にもなれば、効率的な勉強のために電子辞書を使うようになります。しかし、それまでに辞書に親しみ、言葉の配列や索引の利用の仕方などを理解するためには、最初に冊子体の辞書をふだんから使うことをお薦めします。端末のボタンを押したら苦労もなくすぐに答えが出てくるのと違って、子どもは手を使って分厚い本の中から宝物探しをする気分を味わえます。
(高橋門樹)