全国珠算教育連盟が隔月で発行する「全国珠算新聞」の最新号(2017年3月1日発行)に、視覚障がい者用そろばんを紹介する記事がありました(写真)。

 視覚障害のある方には、計算結果がモニター画面に映し出されるだけの計算器具は使えません。そろばんを手で触れながら、数字や十進法の構造を理解し、そろばん式の暗算法を習得して計算をするそうです。

 視覚障がい者用のそろばんは、触れると簡単に珠が移動してしまう通常のそろばんとは違い、簡単に玉が動かない仕組みになっています。日本の関東式と関西式の他、アメリカ式があるとのことです。

 電卓やPCの発達に伴って、そろばんの存在意義が問われがちな昨今、そろばんの有用性を再確認できる1つの事例です。視覚障がいを持つ方の計算方法も、健常者のそろばん上級者が暗算をする方法も原理は同じです。

 そろばんの指の動きを繰り返すことで脳内に疑似そろばんが構築され、自分の脳そのものが有能な計算機となります。それは数の概念を理解しづらい幼児が、そろばんに触ることで数を理解していくのにも通じます。指の触覚は脳神経の延長です。

 そろばんの有用性を計算機としての性能で電卓・PCと比較して考えるよりも、それらでは代替できないそろばんならではの様々な利用方法を知ることが、そろばんのルネッサンスにつながると思いました。

(高橋門樹)