≪もんじゅ≫では教養の1つとして、季節の行事や風習を生徒さんに知ってもらいたいと思っています。そこで、ホームページ上で定期的に季節の話題をとりあげ、わかりやすくご説明します。
第25講 ―― かぐや姫がみた地球
かぐや姫の物語(竹取物語)を皆さんご存知だと思います。『源氏物語』には、「物語の出で来はじめの祖なる竹取の翁」とあることから、かぐや姫の物語は日本最古の物語と言われています。
作者不詳のこの物語には、次のようなくだりがあります。(勉誠出版社『竹取物語絵巻』口語訳から)
「(陰暦)8月15日の満月の夜に近づくころ、
かぐや姫は月が見える場所に座って、ひどく泣きました。」
「実はわたしは人間の世界の人ではなく、月の都の人なのです。
それが、月の国の定めによってこの国に参ったのです。」
(月の使者が竹取の翁に向かって)
「かぐや姫は罪を犯したので、このように賤しいお前のところに
しばらくの間あずけたのだ。
罪の償いの時が終わったので、こうして迎えに来た。」
かぐや姫は「月の国の人はたいへん清らかで、人は年寄ることもなく、くよくよと心配することもございません」といいます。そんな月の人であるかぐや姫が、月でどのような罪を犯したのかは明らかにされていません。
ではなぜ、賤しくけがれた地球に来たのでしょうか。そこは想像するしかありません。そんな折、昨日、日本の月探査衛星「かぐや」からの素敵な映像がNHKを通じて配信されました。月から観た「地球の入り」です。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160914/k10010685921000.html
衛星「かぐや」の映し出す地球は、正にかぐや姫が魅せられた地球なのだと思います。かぐや姫は月の世界からこんな地球を眺めて、あまりにも美しいので、地球で一時期を過ごしてみたいと思ったのではないでしょうか。それが月の世界の「罪」だったのかもしれません。
「それほどまで地球に思い焦がれるなら行ってみなさい、あの穢れた星へ。それ自体が罰だ」と。しかし、かぐや姫は、養父母の愛に包まれて、地球をなおいっそう好きになってしまいました。絵巻の中に彼女の「月へ帰ることが嬉しいとは思えません」と嘆く言葉が残されています。
今日は、そんなかぐや姫が月へ帰った陰暦8月15日、中秋の日です。涼やかな夜風に吹かれながら、名月に思いをはせるのもいいかもしれません。
(高橋門樹)