新元号が「令和」(れいわ)に決まりました。次の世を象徴すべき元号に、お慶び申し上げます。さて、私なりに新元号の字解をしてみました。
「令」を漢和辞典で調べると、主として次の意味があります。①言いつける動作とその指示……命令、号令、法令など。②官職名…県令、権令、守令など。③善いこと、美しいものへの形容……令聞、令月、令色など。④人への尊称……令嬢、令息、令夫人など。
「和」の字義としては、①穏やかに心があわさる状態……調和、温和、柔和など。 和(やわ)らぐ、和(なご)む、などの訓読みもあります。②争いをおさめる様子……平和、和解、和合など。③日本民族の象徴……大和、和風、和紙、和語など。
「令和」は、「令」の③と「和」の①~③をあわせ含んでいるものかと推察します。つまり、「善き和やかな時代」または「美しき大和の人々」を表象しているように思われます。
出典は万葉集(成立は759年以後)第32首、漢文風の序文、「初春令月、気淑風和、梅披鏡之前粉、蘭薫珮後之香」です。「令」と「和」は、3文字目と8文字目にあります。
書き下し文は次の通りです。「初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫らす。」
この序文は、大宰府の大伴旅人の邸宅で梅の花を観賞する宴が催された時に、山上憶良(660~733年)が詠んだと言われています。当時、梅の木は中国から持ち込まれて間もなく、まだ珍しかった梅の花の下に人々が集まり、梅の花の咲く様子をみなで歌に詠んだようです。
今回の元号は、現首相自ら漢籍からではなく、日本の古典に出典を求めたと聞いています。中国から伝わった梅の花を愛でる、いにしえの日本人の言葉から選び採ったことは、これまで使ってきた漢籍への答礼と考えられるかもしれません。
本稿では政治論議をさて置き、新たな御代を言祝(ことほ)ぐ文章にまとめました。これからの日本で「令和」が実現することを願ってやみません。
写真は、わが家の梅の花です。現在13歳の娘が生まれた時に庭に植樹しました。今では4メートルほどの高さになって毎年薄紅色の花を咲かせ、梅の実をたっぷりとつけてくれます。 「令和」の出典は、梅の花にゆかりがあるとのことで、つい先月撮った写真を添えました。