2013年度4月に開塾した≪もんじゅ≫は今月、おかげさまにて3年目に入りました。開塾当初は、親がこの地で40年間以上続けてきた浅井珠算教室を引き継いだものの、試行錯誤の連続でした。しかし、1年目のそろばん・暗算コースと音読・書きとりコースの2コース制から、2年目に作文・読書コースを増設し、その間、当教室が全国珠算教育連盟に正式加盟して、各種の検定や大会に教室をあげて参加するようになったり、独自に九九チャレンジを作成、九九検定を実施し始めたりしてきました。また春期講習・夏期講習の開講などを通じて、地域の方々の間でも少しずつ当教室の存在を知っていただき、生徒さんも順調に増えてきました。あらためて御礼申し上げます。今後とも不断の努力を続け、地域のお子さまに「学びの楽しさ」を広げていきたいと思っております。
 桜の花びらが舞い散る4月も、気づけばもう終わりが見えてきました。若葉が萌える春を迎え、お子さまたちには新芽・若葉のように、ますますその可能性を伸び伸びと広げていっていただきたいと思います。さて、今回は以下に最近の教育界の動向について少しお話をさせていただきます。

 ≪もんじゅ≫スタッフは仕事柄、教育関連の本や記事をよく読み、教育界の人たちと話をする機会があります。そして読み、話をするほど、今の日本の教育が制度疲労を起こしており、明治以来大きな変化のなかった教育が大きく変わっていく確信があります。明治期、戦後、ともに欧米に追いつくために、欧米発の知識の修得に日本人は全身全霊をかたむけてきたと言ってもよいでしょう。しかし21世紀に入り、欧米・日本の経済的停滞とアジア諸国の勃興という時代の流れの中で、教育目標や制度が変わりつつあります。
 すでに大学入試のセンター試験廃止と同時に、思考力・判断力・表現力の評価に重点をおく方向へと受検方式が移行しつつあります。また実際に大学入試をみても、この10年ほどで一般入試の割合が減少する半面で、増えてきているのは成績に加えて学校内での各種活動歴が重視される推薦入試や、独自の実績や能力をアピールするAO入試です。AO入試もかつて言われたような「一芸入試」などではありません。幼少期から鍛錬してきた技能やとびぬけたな行動力、異文化経験にもとづく独自の価値観などがアピールされるようになってきています。
 また、大学生の就職活動に目を転じると、以前のように企業が学校名だけで採用することも減っています。常に右肩上がりだったバブル期までと違い、まじめに言うことを聞くだけの優等生は、企業に利益をもたらしてくれないからです。有名大学の学生でも、既存の知識しか持たず自分の意見が話せない、あるいは何か自分で考え行動した実績を語れない人は、企業からなかなか内定がもらえません。一方、中堅大学卒でも学生時代に自発的に行動し、様々な体験をし、大学に入ってからきちんと勉強をしてきた人物は、就活でいくつもの内定を獲得することがよくあります。
 これからの時代、暗記一辺倒で知識量を計るような試験は意味をなさないだけでなく、有害にすらなります。大学入学自体が目的となり、入試後に「燃え尽き症候群」を引き起こしかねません。大学を就職までの猶予期間と考え、本分以外の部分であるサークル活動やアルバイトに注力してしまいがちです。大学時代の勉強時間の短さは、日本特有の現象です。言語能力、IT技術、専門能力で他国の若者と国内外で勝負する時代において、日本の教育は時代遅れとなっています。
 子ども時代はむしろ、実体験をもとに興味・関心を喚起し、調べ学習などを通じて知識の幅を広げ、子ども同士の交わりから生身のコミュニケーション方法を覚えていくことによって、学びの土台を築く時期です。その土台があればこそ、大学という学問の府で知的探求活動を大いに謳歌することができるようになります。今後、グローバル化した時代で生きていくためには、知識量での勝負ではなく、柔軟な交渉力と発信・判断力の涵養が求められてきます。

 ≪もんじゅ≫が教育目標とするのは、教養を持ち、自分で思考・判断し、口頭および文章で意見を語れる人材の育成です。音読・書き取りコースでは、漢字を中心として学校で勉強する基礎知識はもちろん、古今東西の古典の知識も勉強します。また授業では自己表現も重視して、自己紹介や意見表明の練習もします。そろばん・暗算コースでは、瞬時に計算ができるようになるだけでなく、昇級・昇段をめざして数年間にわたる練習を続けることで、継続的努力の強さを体得します。そして、作文・読書コースでは、毎週決まった量の優良書籍を読み1枚の記述解答式の読解ワークシートを提出します。また各種の作文ワークシートもこなして、文章執筆に長けたお子さんを育てます。
 私たち≪もんじゅ≫スタッフは、自らを「現代版寺子屋」であると言っています。勉強の方式が「読み・書き・そろばん」であることが「江戸時代の寺子屋」と共通項であるばかりでなく、少人数クラスで師と弟子が直接言葉を交わす機会が豊富になること、学年を超えた生徒同士の接触があり、発問と応答が多く、自然なコミュニケーション能力が身につくことなども、寺子屋たるゆえんです。「現代版」というのは、その目指すところが古典に通暁した知識人の育成を目指すのではなく、グローバル社会の中でコミュニケーションができる日本人を育成するところにあります。いわば「グローバル・スキル」としての「読み・書き・そろばん」です。
 昨今、パソコンの発達と普及がそろばんを不要にしたと、一般的には考えらえているかもしれません。しかし、実際にそろばん教育の現場に身を置く者は、そうは考えていません。そろばんの修練によって培われる暗算能力は、外国人が目の当たりにすると超人的な技能として驚嘆されます。かつて就職に有利になることから中高生を中心に習われていたそろばんは、今や学習者が低年齢化しており、幼稚園児から小学生までのそろばん大会の参加者数が毎年のように最多記録を更新しています。頭にそろばんのイメージを浮かべつつ数理処理を高速に行う能力は、子どもの育脳に最適であることに気付いた人が増えています。そろばんは時代の遺物などでは決してなく、電卓やパソコンで人の計算能力が劣化してしまった現代にこそ習得すべき有為な育脳ツールです。

 現代版寺子屋である、こども教室≪もんじゅ≫で一緒に勉強するお子さまのご入会を、心よりお待ち申し上げております。

 

≪もんじゅ≫代表 高橋直美