12月下旬に第6回≪もんじゅ≫遠足として、「気象庁・皇居見学会」を実施しました。その時のことを2回に分けてご報告します。
気象庁見学は、毎日の天気予報の元となる分析の現場を知るために企画しました。気象庁は予約なしで見学できる庁内の気象科学館と、予約をして職員さんから窓越しに予報現業室と地震火山現業室をガイドしてもらうコースの2つがあります。今回は午前10時半から30分間ほど庁職員さんから説明を受けた後に気象科学館で体験学習をしました。
参加者は、≪もんじゅ≫の生徒ら子どもたち6名とお母様2名、そして≪もんじゅ≫指導スタッフ3名の計11名でした。朝9時すぎに鶴川駅に集合、電車を乗り継いで気象庁すぐ近くの竹橋駅に10時すぎに到着しました。気象庁の入口ではICチップ付きの入館証を受け取り、首にかけて入館しました。エレベーターで上ったところにある現業室には、各種の気象画像が映っている多くのモニターがあり、気象官の方たちが分析をしていました。
解説は気象庁広報室の若い男性職員さんが担当してくださり、日本国内だけでなく外国からも集められる気象情報によって天気が分析されていることがわかりました。また、私たちからの質問にも丁寧に答えてくださいました。気象庁に就職するためには、国家公務員試験に合格するほか、気象大学校を卒業するという2つのルートがあることがわかりました。気象大学校に入学するのは、1学年15名の極めて狭き門だそうです。
入庁すると職員さんは皆、最初に日本各地の気象台に派遣されて数年間勉強します。基本的に地方気象台と東京の気象庁の間で転勤が何度かあり、「気象庁職員は転勤族です」とのことでした。気象観測は24時間継続して行なわれ、若手は夜勤が多くなります。勤務時間は不規則になりがちで、職場結婚が多いことまで教えてもらいました。東京を大震災が襲った時のことを想定して、万が一、東京の気象庁が一時的に機能を果たせない時には、大阪の気象台が代替するように備えているそうです。
最近は天災の大規模化や、気象衛星ひまわり8号の衛星写真がきわめて鮮明になったことなどから、気象情報に関する社会的関心が高まっており、今年の8月には気象予報士に史上最年少11歳で合格した女の子が出てきたそうです。飛行機が発着する空港がある地域の予測は特にきめ細かく行ない、空港と直接情報のやりとりがなされているほか、避難が必要な台風や洪水などの情報は、様々な要素を考慮して自治体へ通知するそうです。
小学校教員だった≪もんじゅ≫スタッフからは、「こうした天気の仕組みや現場のことを小学生に詳しく見せられたら、子どもたちはもっと天気に興味を持ちますよ」との意見が出されました。気象庁職員さんは、「小学校への『出前授業』は時々しているのですが、なかなか全ての学校を回ることはできないのが現状です」とのことでした。あとできることと言えば、親御さんがお子さん連れでこうした見学をすることかもしれません。
気象の観測と分析は、天災から地域住民の生命を守るほか、船舶の航行や航空便の運航にも直結し、その年の農業の出来高を左右する非常に重要な情報でありながら、それを学校で学ぶことのできる地学が、大学受験の理科科目としてはやや軽視されがちな状況が残念に思えました。生物・物理・化学は産業の発達に重要な知識ですが、あらためて気象庁で話を伺うと、地学も全国民がきちんと理解しておく必要のある知識だと思いました。
気象庁には小さな書店があり、気象学の専門書から子ども向けの図鑑・絵本など様々な本が売っていました。私は中学で勉強する天気記号のトランプを見つけて、≪もんじゅ≫の授業で使うために買いました。太陽の下の雲から雨が降っている様を示している気象庁のマスコット「ハレルン」のぬいぐるみとストラップも売っていました。ハレルンは調和のとれた地球の気候を司る緑のタクトを振っています。気象庁グッズはあなどれません。
お母さんにハレルンのぬいぐるみを買ってもらった幼稚園の男の子は、ハレルンを気に入って、その後の見学でもずっと握って歩いていました。一緒に見学をしたお母様は、後日メールで「天気の絵本を買って家で幼稚園の娘に読んだら、天気に興味をもったようです」とおっしゃっていました。昼食は気象庁地下1階の80人ほど入れる食堂で食べました。清潔な明るい食堂で、気象庁職員の方たちに囲まれて食事をするのは、貴重な体験でした。
気象庁の分析対象は、天気予報だけではありません。地震などの現状分析と警戒情報の発令もしています。そこで、気象科学館では天気だけでなく、火山・地震・津波などのメカニズムがわかりやすく展示・体験できるようになっています。例えば、器具の上で自分が起こす揺れが震度いくつに相当するかを測定できる震度計がありました。地震に関する説明パネルを読みながらランニングマシーンをするかのようなユニークなコーナーです。
また、波浪や津波を実際に起こす津波シミュレーターもあります。水槽の右側手前のボタンを押すと、左側奥の機会が波を起こします。津波が海沿いの街並みを襲う様子がわかります。他にも、地震のP波とS波の発生模型もありました。地震は最初に小さなタテ波のP波(Primary wave)が先に起こり、次に大きなヨコ波のS波(Secondary wave)が届きます。その違いを自分で模型を動かして理解します。理科の学習を体感できる有用な展示がいくつもありました。
気象庁の食堂は、見学者にはありがたい場所です。丸の内のビジネス街の一角にあるので、近くのレストランには事欠かないのですが、ランチは予約できないことが多く、子どももいる10人を超えるグループでは、適当なレストランを確保することが見学会で常に課題になります。気象庁の食堂はいずれの定食も500円前後と安価な割に、食材の数と量がたっぷりとあり、グループ見学者にはとてもありがたかったです。
勉強は通常、教科書で用語を覚え、問題集で解答できるようにすることがほとんどですが、時おり学習対象を子どもに肌身で感じさせて関心を深めることや、今している勉強が将来活用される職場を見せることも大切だと、≪もんじゅ≫は考えています。今回は気象庁での見学人数の制限があるために、小学校高学年から中学生を中心に生徒さんと保護者の方に参加を呼びかけました。次回は自由に希望者が参加できる≪もんじゅ≫遠足を企画する予定です。
(高橋門樹)