≪もんじゅ≫では教養の1つとして、季節の行事や風習を生徒さんに知ってもらいたいと思っています。そこで、ホームページ上で定期的に季節の話題をとりあげ、わかりやすくご説明します。
第26講 ―― 勤労感謝の日
毎年11月23日は国民の祝日「勤労感謝の日」です。ところで、ここで感謝する「勤労」とはなんでしょうか。内閣府HPでは「国民の祝日に関する法律」にもとづき、「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」と説明されています。 そこで、お子さんたちが、お父さん・お母さんに「私たちのために、いつもありがとう」と感謝をするように指導することはすばらしいことですし、良い道徳教育にもなります。
しかし、もう一歩進めて、実は古来より続く日本の伝統文化としての11月23日のお祭りを知っておくと、勤労感謝の日への理解がいっそう広がります。もともと11月23日は、飛鳥時代から天皇家で執り行われてきた新嘗祭(にいなめさい、又は、しんじょうさい)に由来します。また、国民の祝祭日の1つとして明治6(1873)年から「新嘗祭」という名称で制定され、現在まで継続している国民の祝日としては最も歴史が古いものです。
宮内庁HPは新嘗祭を「宮中恒例祭典の中の最も重要なもの」とし、伊勢神宮のHPには「このお祭りは(中略)日本全国の神社で行われていますが、特に宮中では天皇陛下が自らお育てになった新穀を奉るとともに、御自からもその新穀をお召し上がりになります」と説明されています。『日本書紀』には天照大御神(あまてらすおおみかみ)が稲穂を天孫瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に授けられたと記されています。こうした神話と習慣にちなんで、毎年新米をこの日に食べる風習をもつ地域や家庭もあるようです。
この「新嘗祭」が「勤労感謝の日」に替わったのは戦後です。昭和23(1948)年に、第二次世界大戦に勝利して日本を占領していたGHQが、日本での天皇と神道の影響を嫌がり、米国の「Labor Day」(労働者の日、9月1日の祝日)と「Thanksgiving Day」(ピルグリム・ファーザーズの最初の収穫を記念する11月の第4木曜日の祝日)をあわせた「Labor Thanksgiving Day」という祝日を考案し、これを和訳したのが「勤労感謝の日」になったのです。
歴史的由来は異なれど、労働と収穫に感謝する思いは万国共通です。とはいえ、日本の祝日としては五穀豊饒への感謝を忘れないようにしておきたいものです。秋に入って車窓から見かける、一面が黄金色に輝く田んぼは、「瑞穂の国」(みずみずしい稲穂が実る国)の象徴的風景です。
(高橋門樹)