最近、教育界でもChatGPTが話題によく上がります。ネット上で話題になったのは、ニューズピックスの討論で、お子さん4人を東大理に合格させた佐藤亮子さんがChatGPTに対して「18歳までは恐るべき敵」「12歳までは完全隔離」と発言したことに関して、実業家の堀江貴文さんや脳科学者の茂木健一郎さんがネット上で、人格否定にもつながるような強い言葉で佐藤氏を否定しました。討論に出演していた若手の大学教授たちは「未来の教育は味方にすべき」と「味方にする他ない」と語っていました。さて、皆さんはどうお考えでしょうか。

今、公立小中学校でも2年前にタブレット端末「クロムブック」が生徒全員に配布され、宿題が学習支援ソフト「ナビマ」や「キュビナ」で出されることもよくあります。かつて全員に紙ベースで配布されていたドリルやワークブックは少なくなりました。これらのソフトには生徒一人一人が理解していないことが理解できるように個別に新しい問題が提示され、最終的にはすべての子どもたちが自分のペースで学校の勉強ができるようにプログラムされています。ところが、実際の使い勝手を子どもたちに聞くと、「どんどんわかるようになるから楽しい!」との答えは今のところ皆無です。むしろ、「嫌がらせのように後から後から新しい問題が押し寄せてきて、ものすごく大変」との声が大半です。

算数も答えだけ入力すればオーケーです。計算式や筆算を手書き入力もできますが、それをわざわざ端末上でやるのは面倒なので、答えだけ入力する場合がほとんどです。これまでのような「算数・数学は解き方が重要であって、解答だけでなく計算過程も含めて書いて、採点する先生に見てもらいましょう」との指導はできなくなったと言ってよいでしょう。中学校の英語では、ネイティブが話す内容に合う文章を選ぶ問題が大量にあり、聞き取り練習をしてこなかった子はいくら聞いても理解できずに、結局宿題を放棄した子も少なくないそうです。昨年中学生から聞いた話では、いくらやっても終わらないばかりか、どんどん増えていく問題に激高して、配布されたクロムブックを学校で破壊した男子中学生がクラスに時々いたそうです。AIの導入がまだ適正化されていない実態を示している事例です。

あらゆる分野でAIの活用によって仕事や業務が効率化した事例は枚挙にいとまがありません。教育界もAIを上手に導入しなければいけないのは言うまでもありません。しかし、人としての基礎的知能・知性を育成する段階で、子どもが自己思考の代わりにChatGPTを利用することや、「一人一人オーダーメイドのテキストの自動作成」の美名の下に無限カルタを強要するかのような教育支援をタブレットに一任するというのは、危険だと言わざるを得ません。デジタルネイティブ世代がいかにしてAIを学習面で利用するのかは、今後も試行錯誤が続くでしょう。生活や仕事でAIがあふれている今日、ChatGPTを利活用した学習方法もどんどん開発されていくはずです。≪もんじゅ≫はデジタル技術の進展を注視しつつ、可能な範囲で最新の学習方法を導入して、知的基礎能力である「読み書き計算」(英語では3R=reading, writing, arithmeticと呼ばれます)を効率よく効果的に修得できる方法を実施していくつもりです。