3月27日(水)に横須賀市で開催された「第21回日米小学生そろばんコンテスト」(英語名“American & Japanese Children’s Soroban Contest” 全国珠算教育連盟神奈川県支部・神奈川県珠算連合会主催)に、こども教室≪もんじゅ≫の小学生6名が参加しました。

 そろばんを学んでいる4つのアメリカンスクール(所在地:神奈川県相模原市・逗子市・厚木市・横須賀市)の生徒62名と、日本人そろばん学習者66名の小学生あわせて128名(以上出場申請数)が、ヴェルクよこすか(横須賀市勤労福祉会館)に集合し、3年生以下(50名)と4年生以上(78名)の2会場に別れて、見取算(Written Problems)と英語読上算(English Oral Dictation)の点数が競われました。

 10時からの開会式では、菅義偉内閣官房長官の秘書のほか、国会議員、県会議員の祝辞(代読を含む)がありました。来場された横須賀市・田中茂副市長は「1853年にアメリカのペリー提督が横須賀浦賀に来航して、日本とアメリカの交流が始まりました。その横須賀の地で今こうして日米の小学生の皆さんがそろばんを通じて交流されていることを大変嬉しく思います」と話されていました。

 主催者挨拶として全珠連神奈川県支部・久貝治雄支部長は「日本にあるアメリカンスクールの小学生の皆さんが参加するそろばんコンテストは他にもありますが、日米両国の小学生がともに集うコンテストはここだけです」と、本コンテストの特色を解説されました。

 壇上には日本の議員・県市庁関係者とアメリカンスクールの先生方が座られており、神奈川県出身の歌手ASAMIさんがリードする日米両国の国歌斉唱もありました。プロ歌手が高音部分を豊かな声量で歌い上げる米国歌「星条旗」(The Star-Spangled Banner)は聞きごたえがあり、厳粛な空気に包まれました。さらには、会場の後方で軍服を着た米軍の保護者が参観し、専門の通訳が来賓の祝辞を英語で通訳するなど、通常の地方大会とは異なる雰囲気でした。

 10時30分から見取算競技が行われました。日米それぞれの選手が交互に座り、日英両言語で説明があった後、競技は他の珠算競技会同様、「用意、はじめ!」で始まり、5分後に「やめ!」で終えました。始まりと終わりの大きな声の号令には、慣れていないアメリカンスクールの選手たちが、ビクッと体を小さく飛び上がらせていました。

 解答はその場で回収され、別の階で待機していた全珠連神奈川県支部の先生たちが採点と順位決め、学校・珠算教室ごとの成績表、表彰状の作成を始めました。その間に会場では、読上算競技が行われました。こちらは全珠連神奈川県支部の英語読上算同好会Y.E.S(Yomiagezan English Society)の先生方を中心に執り行われました。

 日本に3年ほど駐留すると帰国する在日米軍兵の子女たちは、そろばんを習い始めたばかりの子もいます。そこで、読上算競技は易しい1ケタ5口から始まります。日本語で「願いましては」を英語で“Starting with”で始め、「○円なり」を“○dollars”と言い換え、最後の「では?」を“That’s all”で締めくくります。答案用紙は解答を書く時だけ開けて、1問ごとに書き終わったらすぐに伏せます。

 英語による読上算競技の圧巻は、やはり終盤で10ケタを超える数字で計算力を競う時です。最高で13ケタ(兆、trillion)まで読上げる問題を、一般の人には聞き取れないほどのスピードで読むのは、読み手にとっても修練の技です。数字を間違えずに、聞き取りやすく、速く読むためには、年季が要ります。ほとんどのアメリカンスクールの選手たちは、あまりの速さとケタ数であっ気にとられていました。

 昼食と午後最初のフレンドシップゲームの後は表彰式です。ジャパニーズ・チャンピオンとアメリカン・チャンピオン1人ずつの他に、満点賞(ハイスコア・アウォード)と読上算入賞などの選手たちに、トロフィーや賞状が授与されました。また、参加者全員に参加賞のグッズと、和紙に印刷された参加証明書が手渡されました。≪もんじゅ≫の生徒は、見取算の満点賞受賞者がいましたが、英語読上算はまだまだ練習が必要でした。1年後に再挑戦です。

 今回のコンテストの様子は、J:COMが配信する3月28日の「デイリーニュース」で約3分の特集記事「そろばんを通じて日米の友好を深める日米小学生そろばんコンテスト」と題して放送されました。スマホアプリ「ど・ろーかる」の「J:COM湘南(横須賀局)」の3月28日の回で見ることができます。本投稿の添付写真は「デイリーニュース」から録った画像です。アップで映されていた3人の先生は、皆さんY.E.Sの先生方です(写真)。

 ニュースの中で全珠連神奈川県支部・佐藤寛子副支部長は、「どんな時代になっても私たちは数字と離れることはないと思います。実際に隣でお弁当を食べ、顔を見て、数字で競争することによってお互いを理解するきっかけにしていただきたい」と、コンテストの意義を説明されています。

 また、受賞の感想をジャパニーズ・チャンピオンの谷山智彩さん(小4)は「英語読上算では優勝がねらえないと思っていたから、賞をもらえて嬉しいです」と、またアメリカン・チャンピオンのケン・ラタヤン君(小6)は「そろばんはアメリカ人もやっているので、日本人と一緒にそろばんができて嬉しいです」と語っていました。

 昼食時間中に、Y.E.Sを主宰されている松井幸代先生と神奈川県支部の久貝県支部長にお話をうかがう機会がありました。40年余り前から全神奈川珠算選手権大会で米軍基地の子女たちを招待して、日米友好およびそろばん普及のためにしていた活動を発展させ、20年ほど前に日米の神奈川県の小学生たちが一堂に会してそろばんの実力を発揮するコンテスト形式になったそうです。

 こうしたイベントが長年続いているのも、子どもに計算力と集中力をつけさせるのに効果的な教具であるそろばんの魅力と、日本の中でも在日米軍が集中する県の1つである神奈川県の地の利が背景にあるでしょう。数十年間にわたり、アメリカンスクールへそろばん指導に行かれたり、日米のそろばん交流を継続してこられた先生方のご尽力に、心より敬意を表します。

 ≪もんじゅ≫では開塾5年目の2017年度にそろばん・暗算コースの幅を広げようと考え、2018年1月から全珠連神奈川県支部で毎月開かれているY.E.Sの勉強会に高橋門樹が参加させていただき、2019年の今大会から教室として参加することができるようになりました。STEM教育(科学・技術・工学・数学)が世界的に提唱され、日本で小学校英語が必修化される今日、小学校の教育現場で数理処理能力と英語理解の向上や、国際交流などにそろばんが一層活用されるべきことを提起していきたいです。