『子どもの頭を良くする勉強法――14歳までに教えるべき「生きる術」』(伊藤真、KKベストセラーズ、ベスト新書、2015年6月出版)を読みました。著者の伊藤氏は、東京大学法学部在学中に司法試験に合格し、司法試験受験対策等の伊藤塾を主宰されています。著者の経歴から、効率的な勉強の方法を解説した本かと思いましたが違いました。本書で門樹が興味深く感じた点は、以下があります。以下、同書からの抜粋部分は「 」でくくりました。

 まず、家庭環境を重視していることです。「総合的な力をつけるための素地は、主に『家庭』で習得するものです。生きていくうえで本当に必要な力の多くは、むしろ家庭でなければ身につけられないともいえます。」「子どもの知的好奇心を高めていくためには、親が一緒に面白がる姿勢を子どもに見せるのが一番の近道です。」「テレビに映った事象についてでもいい。『これ、不思議じゃない?』『なんだこりゃ』と一緒に驚き、その後に感想を言い合ってみましょう。」「番組はニュースでもバラエティーでもなんでもかまいません。」「ニュース番組は実に学びの宝庫です。」

 実際に≪もんじゅ≫の音読・書きとりコースの授業で、漢字書きとりの熟語の説明をしている時に、「首相」や「関東地方」のような言葉の意味や場所を聞いても「わからない」「知らない」と答える上級生のお子さんが時々います。それらは、ニュースを聞きながら意見を言ったり、天気予報を聞いていれば、自然と覚える言葉です。そうしたお子さんは語彙が極端に少なく、何かを説明することが苦手であるのが特徴です。朝食や夕食で家族だんらんを楽しみ、家で会話と情報のやり取りを日ごとからすることが、子どもに常識と考え方の基礎を作るのだと思います。

 次にEQ(心の知能指数)です。「心の知能とは、他者に共感したり、自分の感情をコントロールする能力のこと。どんなにIQが高くても、EQが低いとその能力は十分に発揮できないといわれています。」「では、子どものEQ、すなわち感性・感受性・共感力はいかに豊かに養っていくべきなのでしょうか。まさにそれができる場が『家庭』です。」具体的には「いろいろな音楽を聴かせてあげたり、旅行に連れて行っていろいろな場所をみせてあげ」ること、「映画やドラマやドキュメンタリーなどのテレビ番組やDVDを子どもと一緒に見て感動する時間を持つのもいいでしょう。」

 さらに人間同士の触れ合いも提言しています。「今もっともすべきことは、異文化交流だと私は断言します。機会がある限り、海外旅行には連れて行ってあげてほしいですし、外国人に人気の国内スポットで観光旅行者と交流の機会を持つことも有意義だと思います。」「大人の世界も子どもにとっては異文化です。先生やママ友ではない、両親の友人や知人と触れ合えたとき、そこから子どもが受ける刺激は計り知れません。」「親戚を集めたり、客を呼んだりして、一緒に食事をする機会をつく」り、「さまざまな話を見聞きすることで、子どもの見識は広まりますし、コミュニケーション能力も高まるはずです。」

 子どもの勉強方法について、伊藤氏は次のように言います。「読み書きや単純な計算のような基礎学力は、何か新しいことに挑戦しようとしたときに必ず役に立つものです。」「学力をつけるためには、まず目標を設定して頑張ってみること。計画を立てて実行し、毎日プリントなどの課題を1枚ずつやってみること。シンプルですが、これしかありません。まずはそこからです。」≪もんじゅ≫が提唱する「読み・書き・そろばん」、「体験」、「親子共学」は、基礎学力と総合的人間力を形成するのに有効であると、あらためて確認することができました。

 

  門樹