「公文とそろばん、どちらがいいんですか?」 当教室の体験授業にいらした保護者の方からよく受ける質問です。昨日、見学にいらっしゃったお母様からも尋ねられました。

 私自身は小学生の時にどちらも習っていて、学校や受験の計算問題で困ることはほとんどありませんでした。それが公文とそろばんのどちらのおかげか?と問われても答えようがありません。どちらも効果があったというのが正解でしょう。最近も『日経デュアル』(同誌ホームページ2016年12月7日記事http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=9519&n_cid=DUALFB03)と『AERA with Kids』(2016年冬号)で取り上げられているので、私見を以下に書きます。

 公文では大量のプリントを黙々とこなして教室で先生に提出し、採点されて間違った箇所をやり直して再提出します。少しずつ内容が進んでいくので、自学自習するには適した教材です。数年間続ければ小中学生でも微分積分までできるようになります。しかし、プリントを自分でただ解いていくだけなので面白みを見いだせず、途中で退会していった生徒さんがよくいました。

 その点、そろばんは見取り算こそ自分で黙々と解いていきますが、教室での読み上げ算で他の生徒との競争的雰囲気が生まれたり、今どきならゲーム感覚のフラッシュ暗算で暗算力を伸ばしたりできます。複数ケタの暗算が難なくできるようになるのは、そろばんの強みです。ただし、たし算・ひき算・かけ算・わり算がほとんどなので、分数などその他の計算での対応に即応できない生徒さんが時々います。

 どちらを選ぶべきかについての個人的意見を1つあげれば、もし未就学児や小学校1年生のうちから通塾させるのなら、タマを指ではじいて数の概念をヴィジュアルで理解するそろばんのほうが、お子さんの興味を引き出すのに適している気がします。一方でそろばん学習者は年々低年齢化していますから、小学校高学年以上になってから入門すると、すでに高度な計算のできる年下の生徒さんたちに圧倒されてしまう可能性があります。

 他にもそれぞれの長短所を書き出せばまだあるのですが、私自身はそうしたことで両者を比較することに、あまり意味を見出しません。どちらも計算練習に特化していて、図形や証明問題はほとんど扱っていないため、算数・数学の総合力を身に付けたければ別途それ用の問題集で勉強しなければいけないのは同じです。双方とも集中力と高度な数理処理能力を養える点で、日本が誇る計算教育メソッドであることは間違いありません。

 最終的に私がお勧めするのは、「どちらも見学して、お子さんがやる気を見せたほうに入られてはいかがでしょうか」というものです。結局、勉強するのはお子さんです。お子さんが興味を持って継続できなければ意味がありません。デジタル機器が日進月歩の世の中ですが、人間が自らの言語脳力と計算能力を放棄してコンピューターにまかせてしまうことは愚かな選択です。子どものころからしっかりと自分の手と脳で文章執筆と計算ができるように訓練することが、時代に関係のない必須の基礎教育です。

 この「公文とそろばん」についての私見の続きと、『AERA with Kids』の内容紹介は、当教室のフェイスブックの2016年12月12日の記事に書いていますので、そちらもご参照ください。

(高橋門樹)

『AERA with Kids』2016年冬号

『AERA with Kids』2016年冬号