今週の週刊『AERA』(2015年3月16日、No.11)に、下村博文(しもむら はくぶん)文部科学大臣、五神真(ごのかみ まこと)東京大学次期総長、藤原和博(ふじはら かずひろ)教育改革実践家、お三方の鼎談記事「正解も4択もなくします」が掲載されています。教育界の興味深い趨勢が語られているので、一部抜粋して紹介します。
(藤原氏は2003~08年に東京都杉並区立和田中学校で校長を務め、「よのなか科」を実施したことで話題になった人です。)

 * * * * * * *  以下『AERA』からの抜粋

下村:
 今の小学校6年生が受験する2020年度から「大学入学希望者学力評価テスト」を導入し、入試のシステムを変えます。(中略)新しい試験には、面接や小論文など、知識偏重にならない工夫を求めます。
 今までの教育は画一的かつ均一的。富国強兵、そして近代工業社会を支えるための人材教育でした。一定基準をクリアしていれば、個性や多様性は必要なかった。決まった時間内に効率よく、きちっと仕事ができる労働者や官僚を育て、社会に送り出すための仕組みでした。

五神:
 欧米に追いつくべき道筋が明確だったから、教育システムとしては大成功。しかし140年たって、東大はもはやキャッチアップの装置ではありえません。(中略)世界全体が多様化する中で、日本の立ち位置はきわめて重要。大きな責任感をもって日本にしかできないことで世界を変えてほしい。
 一部の中学受験問題は特殊化しすぎている。あそこまでのテクニックを磨くことに、どれほどの人材育成効果があるのか疑問です。

藤原:
 これまでは『走れメロス』を題材に「メロスの気持ちにいちばん近いものを次の4つから選ぶ」という教育がなされてきました。こういう問題を3千問も解くと、選択肢はいつも人が与えてくれて、その中に必ず正解があると思う人が育つ。正解主義の呪縛です。これを変えるには、「メロスが間に合わなかったら、王はあの親友を殺したのか」というテーマで議論するなどの授業に変えないといけません。ぼくが「よのなか科」で実践してきたアクティブラーニングですね。

 * * * * * * *  抜粋は以上

 私、高橋門樹は自分の留学体験や、多くの海外の学者たちと交流してきた経験から、日本人の独創性と発信力の弱さを痛感してきました。知識が豊富で頭の回転が速い人は日本人にも多くいます。しかし、外国人を相手に人と違う意見を堂々と論理的に説明し、議論を牽引していく押しの強さを持っている人は、残念ながらめったにいません。決して語学力の問題ではありません。英語を母国語としていない人でも、多くの外国人はなまった英語で臆せず話します。正解しかアウトプットしてはいけないと考えがちな日本人の弱点です。

 ≪もんじゅ≫では、どのクラスも生徒が押し黙ったままで進行することはありません。教師が質問をすれば、生徒たちが「ハイッ」と元気に手をあげます。双方向のコミュニケーションを基礎とする授業で、知識ではなく自分で出した答えを口にする習慣を身に付けます。