こども教室≪もんじゅ≫は玄関を入ると、ヨーロッパを中心に据えた横幅1メートル余りの大型世界地図が正面に掲げてあります(写真下)。英語で表記された地図を見て、世界を視野に入れた感覚を身に付けたり、ふだん見慣れたアジア中心の地図とは違った物の見方も知ってもらえたりすることが目的です。欧米から見ると、日本が文字通り「極東」にあることがわかります。その他、地図が教室内にあると何かと便利に使えます。

 「うちの子どもは語いが少ないので、読書をさせてください」とご相談にいらっしゃったお母様が、お子さんを≪もんじゅ≫の作文・読書コースに入会させることが時々ありますので、語いを増やす助けになるように、週替わりでめくる故事成語のカレンダーも教室内の壁に掛けています。百均のお店で買ったものですが、中学受験などでも頻出される言葉ばかりで、おすすめです。今週の標語は「ローマは一日にして成らず」です(写真左上)。

 この週めくりカレンダーを見て、「先生、ローマってどこにあるんですか?」と聞く生徒さんがいたので、世界地図のところに連れて行き、「今のローマはイタリアの首都だから、まず地中海に面した国の中で、長靴の形をしたイタリアを探してごらん」と指示します。1分間ほどかかって、「あった。Italyと書いてあるところですよね」と見つけます。子どもたちはこれだけで、ローマに親近感をもってくれます。

 次はローマの地理と歴史です。「地中海の真ん中にあったローマ帝国は、ヨーロッパだけでなく地中海周辺の中東も北アフリカもすべて支配した巨大な帝国を造ったんだ」と、地中海周辺をぐるっと指で囲むように指さします。「こんなに巨大なローマ帝国は、東西に分裂する前だけでも千年以上続いた。だから『ローマは一日にして成らず』とは、大きなことは簡単には成し遂げられないという意味なんだよ」と説明すると、納得してくれます。

 ≪もんじゅ≫には色々な地図がありますが、玄関わきに掛けられていて、しょっちゅう生徒さんたちが触っていくのが、アジア大陸の地勢図です。中国の書店で見つけて買ってきました。これはプラスチックでできていて、陸地の高低が忠実に表現されています(写真右上。写真は凹凸がわかりやすいように、斜め下から撮りました)。これを見て触ると、「世界の屋根」と呼ばれるヒマラヤ山脈とそれに連なるチベット高原の高さと広さが良くわかります。

 地理や歴史の勉強は、直接見たり聞いたりできないことばかりです。無味乾燥に見える知識でも暗記することそのものを楽しく感じられるお子さんもいますが、それでは勉強に興味が持てないお子さんも少なからずいます。そんなお子さんでも、地図や地球儀、図鑑などがあれば、それらを見て触って、コミュニケーションの中で興味が喚起されていきます。活字の知識だけでなく、五感を通じての感覚と知覚は、勉強の中で大切にしていきたいものです。

(高橋門樹)