台風一過、急に肌寒くなってきました。もう秋ですね。
読書の秋、音読・書き取りコースで取り上げた川端康成の「雪国」の冒頭について少しお話します。

川端康成と言えば、日本で最初のノーベル文学賞を受賞した文学者です。
私にとって川端康成は、「伊豆の踊子」や「古都」、「雪国」など、
日本らしい情景を彷彿とさせる美しい文章を、抒情性豊かに綴る作家という印象が強いです。

≪もんじゅ≫では、名作の冒頭を音読しています。
先日も、「雪国」の冒頭を声に出して読んで、子どもたちに覚えてもらいました。

「 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
 夜の底が白くなった。
 信号所に汽車が止まった。」

有名な一節ですね。これを小学校3年生の子どもたちに何度も読んでもらった後、
「どんな場面だか想像して再現してみせて」と尋ねると、
身振りをまぜて、次のように説明してくれました。

「列車が真っ暗なトンネルを抜けたら、真っ白な雪の世界が広がったの。」
「トンネルから出ても、夜だから暗いはずなんだけど、
 つもっている雪に列車の中の光が反射して、
 窓の外、とくに下のほうがが明るいんだよ。」
「ガタンゴトン、ガタンゴトンって走っていたのが、
 信号のところで停まって、シーンとなった。」

子どもたちの想像力はみごとです。教室にいながらにして、列車に乗っているようです。
いえ、やはり川端康成の筆力のおかげもあるのでしょう。
子どもたちが、ありありとその場面を思い浮かべられるような描写だからこそ、
世代をこえて名作として読み継がれるのだと思います。
名作の名作たる所以(ゆえん)です。

おとなも、たまにはゆっくりと名作を味わう時間を持ちたいものです。

  門樹