≪もんじゅ≫の音読・書きとりコースでは、「自己表現の練習」として学年ごとに将来の職業につながる質問をしています。たとえば、小学校2年生には「お父さんとお母さんのすごいと思うところ」を、また小学校3年生には「あなたの好きなこと、とくいなこと」、「それを始めたきっかけ」、「できるようになりたいこと」を、小学校4年生には「将来やりたい仕事」「その理由」「その仕事で人の役に立つこと」を答えてもらいます。
 気づいたのは、低学年ほど男の子にとってはお父様の存在が、女の子にとってはお母様の存在が大きなことです。コンピューター・エンジニアのお父様が自宅のPCをこともなげにセッティングしてくれたり、野球やサッカーを教えてくれるお父様。巧みな手芸技をもっていたり、おいしい料理を作ってくれるお母様。身近な存在であるご両親から、お子さんは最初の将来目標を設定していくことがわかります。

 小学校4年生の生徒さんに将来なりたい職業をたずねたところ、当初、自営業のお宅の男の子たちは「お父さんが社長だから、それを継ぐと思う」と答えていました。尊敬するお父様のようになりたいと思うことは素晴らしいし、将来、実際にそうなるのかもしれませんが、「お父さんが社長だから、ぼくも社長になる」と考える前に、その仕事そのものの良さや意義も理解しておいてもらいたいものです。
 そこで、上記の「その理由」と「その仕事で人の役に立つこと」を言ってもらうことにしました。生徒さんたちは「人に役立つこと? そんなこと考えたこともなかった」と言いつつ、自分なりのしぼり出した考えをワークシートに書きました。順番に発表してもらうと、先ほどは単純に「親の会社を継ぐ」と言っていた子どもたちが、今度は自分が好きで打ち込んでいることを職業にあげていました。
 「ヴァイオリニストになって人を感動させたい。美しい曲を弾いたら、みんなが幸せな気分になる」。「サッカー選手になれば、ゴールを決めた時に、大人も子どもも、みんな喜んでくれる。子どもはぼくを見てサッカーの練習をするようになり、努力することを覚える」。「そろばんの先生になって、アフリカでまずしくて学校にいけない子どものために、計算を教えてあげたい」などなど。すてきですね。
 お父様とお母様の仕事や生活での真剣な生き方に、お子さんたちは強い影響を受けます。それと同時に、若い時分には自分の可能性を信じて夢を追うこともしてもらいたいと思います。20歳をすぎるころには、お子さんも現実的な選択をし始めることでしょう。その時に、お子さんたちがそれまでに積み上げてきた自分の経験があれば、親御さんのアドバイスがさらに活きるのではないかと思います。

 ≪もんじゅ≫の授業が、生徒さんたちにお父様、お母様のありがたさと立派さを知ってもらい、自分の可能性にも気づく機会となれば嬉しいです。

(門樹)