日本英語検定協会の報告書「小学生の志願者数が大幅アップ」に掲載されていた表を画像にして引用しました。

 2017年2月に文部科学省は2020年度から実施する次期学習指導要領の改訂内容を公表しました。その中では、英語を小学校5・6年生で正式な教科として児童の成績評価を行ない、これまで5・6年生で行なってきた「外国語活動」を3・4年生に前倒しにするということが明らかになりました。人口減少に伴う日本国内の市場の縮小と世界経済のグローバル化の圧力から、日本政府は英語学習の低年齢化に舵を大きく切り始めました。

 文科省が2013年12月に公表した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では、英語教育の従来の目標が中学校で英検3級、高等学校で英検準2級~2級程度だったものを、新たに中学校が英検3級~準2級、高等学校が2級~準1級程度と、1段階アップしたことが明記されています。従来のセンター試験に代わって2020年から導入される新テスト「大学入学共通テスト(仮称)」では、英検準1級の合格者は英語科目が満点に換算されることになっています。つまり、英語で大学受験を優位に進めたいお子さんの目標は、高校3年時の大学入試までに英検準1級ということになります。

 かつては高校生が英検2級に、大学生が英検準1級に合格しておけば、英語が得意な生徒であると評価されたものですが、今やそれでは英語実力者とは認められなくなっています。では、学年をさかのぼって小学生は英検の何級に合格目標を設定すべきでしょうか。上記のとおり、一般の中学生の上位目標が準2級、下位目標が3級であるなら、小学校卒業までに英検3級合格を目指しておくことが、学校の勉強で英語を得意科目とすることを目ざすお子さんの妥当な目標であると言えるでしょう。

 近年、英検受検者は全体的に増加傾向にありますが、その中でも小学生の増加率は目立っています。公益財団法人・日本英語検定協会が2016年9月に公表した報告書「小学生の志願者数が大幅アップ」によれば、小学校で「外国語活動」が導入された2011年度と4年後の2015年度を比較すると、小学生全体の英検受検者は24%増しており、特に低学年ほど増加率が顕著になっています。英語学習の低年齢化が本格化している表れです(貼付画像)。

 英検協会の同報告書では、直近の調査で上位級ほど小学生の受検者数増加の傾向が顕著であるとも指摘しています。2015年から2016年の1年間だけで、英検3級の大人を含む受検者全体の増加率が7.0%であるのに対して小学生の増加率は16.7%あり、また準2級は前者が9.9%、後者が17.8%と、小学生の増加率が全体を大きく上回っています。驚くべきことに大学生から一般人レベルの準1級は、全体の増加率が25.9%である一方で、小学生が31.9%も増加しています。英語教育の早期化とレベルの向上が数値で明らかになっています。

 私は≪もんじゅ≫で音読の学習効果を提唱し、音読を取り入れた学習方法を各教科で実践していることから、現在小学校6年生の娘に対しても、幼稚園のころから英語の音読を続けてきました。詳細はここでは控えますが、基本は毎日、子ども向けの英語絵本1冊をネイティブが吹き込んだ英語CDを1文ずつ流すか私が発音し、それを娘が真似て音読するというものです。文法など試験対策用の英語学習は子どもには理解が難しいので、英検受検を始めたのは小学校4年の後半からでした。小学4年3学期(2月)で5級、5年1学期(7月)で4級、6年1学期(7月)で3級に合格しました。

 娘はつい先日、小学校の英語研修で10日余りオーストラリアに行ってきました。ホームステイ先での英語について娘は、「ホストファミリーのお母さんが一生懸命私に話しかけてくれて、言うことはほとんど理解できた。私は単語を並べてコミュニケーションはとれたけど、もっとちゃんとした文章を話せるようにしないといけないと思った。向こうの家の妹とその友達たちは、難しい言葉じゃないけど英語をベラベラしゃべっていたから、新しい単語をおぼえるだけでなく、いろんな言い回しを知ることが大切」と、感想を言っていました。英語学習の新たな動機づけができたようです。

 子どもの会話では抽象的な単語や回りくどい言葉づかいは出てこないので、物の名前と基本的な会話を修得しておけば、英検3級レベルの英語でも短期間のホームステイでのやり取りにかなり対応できます。とはいえ、初めて親から離れての海外生活が娘は心配で、とりあえず家から持参した自己紹介写真集の説明文とホームステイ用の英会話集を、飛行機や滞在先の部屋で繰り返し音読して頭に入れたと言っていました。ホームステイのお宅を離れる時に、英会話集で覚えた “Thank you for everything. I’m very grateful to you.” を言ったら、お母さんが熱くハグしてくれたのが嬉しかったと話していました。

(高橋門樹)