当教室が加盟する全国珠算教育連盟の名誉会長は、宇宙飛行士の山崎直子氏です。同氏は2010年にスペースシャトル・ディスカバリーに搭乗した方です。
『全国珠算新聞』2015年1月号(第609号)に年頭のあいさつを書かれているので、以下に山崎名誉会長の言葉を抜粋して紹介します。

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もともと「宇宙」という言葉は、中国で紀元前に書かれた『淮南子(えなんじ)』という書物の中で紹介されているのですが、「宇」は四方の空間を、「宙」は過去・現在・未来の時を示すとされています。
(中略)
私の名刺には、全国珠算教育連盟の名誉会長を務めていることを記載していますので、名刺をお渡しした方から、「宇宙と珠算ですか?」とご質問を受けます(中略)「数」と「宇宙」はとても身近な存在であると感じております。
数も、言葉も、音楽や美術のような芸術も、すべて宇宙を表現する切り口なのかもしれません。
(中略)
そろばんを手にするとき、ぜひ宇宙と対峙し、宇宙へ想いを馳せてくださったら、うれしく思います。

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昨年の年頭あいさつのお言葉に引き続き、宇宙飛行士である山崎氏らしい観点です。そろばんによって鍛錬される数理処理能力は、ただ学校の算数・数学の解法に利用するのではなく、宇宙を構成する原理の解明や世界観の構築にまで推し広げて役立てることができるのでしょう。1つの技能の習得は、森羅万象の理解にまで通じるのかもしれません。

『訳註「淮南子」』(講談社学術文庫)を、あらためて読んでみました。紀元前140年前後の中国で、道家・儒家・法家・兵家・墨家などの諸子百家の思想を百科全書的に編纂した本書には、宇宙についていくつかの記述がありました。
「虚かく(カオス)から宇宙(空間と時間)が生まれ、宇宙から元気(万物の根源的な元素)が生まれた。」
「古(いにしえ)から今に至る無限の時間を宙と言い、四方上下に広がる無限の空間を宇と言う。」
「初めて天から陽気が下り、地から陰気が上がって、ここに陽気と陰気が交じり合い、相たずさえて宇宙の間にゆったりと行き渡れば、エネルギーを含みハーモニーを抱きつつ、わらわらと群がり集まってきて、ついに何かに凝集する」などです。
あたかもビッグバン後にガスが漂い、気が遠くなるような時間をかけて、星が形成されていったかのような記述が、紀元前の中国でなされていたことには驚くばかりです。