≪もんじゅ≫では教養の1つとして、季節の行事や風習を生徒さんに知ってもらいたいと思っています。そこで、ホームページ上で定期的に季節の話題をとりあげ、わかりやすく説明します。(今回はお子さん向けとしては言葉がむずかしいですね。)

第15講 ―― 年賀状のはじまり

 師走の行事の1つに、年賀状の作成と投函があります。皆さんは、もうお済みでしょうか。ところで、年賀状がいつから始まったのかをご存知ですか。
 日本での始まりは、大化の改新に起源があります。大化の改新とよばれる一連の政治改革の中で、中大兄皇子と中臣鎌足が蘇我入鹿を殺害した645年の乙巳(いっし)の変の翌年、政治的伝令書を届ける駅馬を置く「飛駅使(ひえきし)」制度が始まり、同時に宮廷で年賀の儀式も施行されました。そこで年賀状のやりとりが始まったと考えられています。平安時代の儒学者の文書には、年賀状の文例が書き残されています。
 中国では、古代より組織の上役や親戚、友人を訪問した時に、相手が不在であれば訪問したことを書きとめた木簡または紙を置いていました。この書置きは「刺」と呼ばれ、「名刺」という言葉の由来でもあります。書状を年賀用に贈り合うのは唐時代(618~907年)に習慣化され、当時「拝年帖」と呼ばれたようです。現存する最古の年賀状は、北宋時代(960~1127年)の文学者が友人に贈ったものだそうです。
 暦や正月を祝う習慣は中国から日本に伝わりましたが、年賀状のやりとり自体は、日本も中国も時代差はあまりなかったようです。日本では明治時代に郵便制度が確立すると、年賀状はがきが大々的に流行しました。私が中国に滞在していた1990年代初め、中国でも日本に倣って官製の年賀状が始まったのを記憶しています。今やインターネットの発達で、日本でも中国でも年賀状はネット送信が多くなりました。
 紙の書状、デジタル画像、いずれであれ、知人に年賀とともに挨拶や近況を伝える習慣は続けたいものです。