≪もんじゅ≫では生徒さんの入会時にそろばんとそろばんケースを、生徒さんと保護者の方に選んでいただいています。そろばんは基本的に23ケタのそろばんを選んでもらいますが、かつておばあ様やお母様が使っていた27ケタのそろばんを持参されるお子さんもいらっしゃいます。昔のそろばんは素材の良いものだったり、名工の銘が入っている物もあったりして、新しいそろばんを買ってもらうのには惜しいこともありますから、その場合はそちらをお使いいただきます。
 ただし、百均で売っているプラスチック製のそろばんはケタ数が少なく、珠と軸の作りが粗雑なので、ご遠慮いただいています。また、上級者になるとワンタッチそろばんの購入を、改めてお薦めしています。上級・段位の検定や競技では、コンマ数秒の差で合否や勝敗が決まってしまうので、時間短縮が大きな命題になります。

 さて、そろばんケースについては、1年ほど前に知り合いで、ハンドメイドの通園・通学・お稽古用品の制作・販売をされている「ジャスミンフィールド(Jasmine Field)」の飯尾さんから相談をいただきました。お子さんがそろばんを習い始め、「そろばんケースを自作したいので、どのような機能や仕様が良いのでしょうか」とのことでした。
 お答えしたのが、機能としては①衝撃吸収と②防水・防湿の2点、利便性としては③留め具の種類と④ネームタグの2点、商品としては⑤デザイン性をお伝えしました。
 そろばんは教具であるだけでなく精緻な工芸品でもあるので、丁寧に扱っていただきたいものです。決して安価ではないそろばんを保護するためにも、そろばんケースの最大の目的は衝撃吸収です。そして、多雨多湿な日本では、そろばんの軸に水分とともに汚れが付着して珠の滑りが悪くなることがあります。持ち運びの時は質の高いそろばんケースに入れて、雨などに濡れないようにしてもらいたいです。
 そろばんの学習人口が低年齢化する中、未就学児の生徒さんを見ていると、まだ手が短いために長いそろばんケースをファスナーで開閉するのが不便そうだったり、ケースのふたがボタン式になっていて、力を入れないと留められなかったりすることがあります。そこで、未就学児用にマジックテープでフタの取り外しができるものも作っていただきました。
 案外、無いと困るのがネームタグです。教室はもちろん、大会でもそろばんの忘れ物が時々あります。教室内であれば、座席やそろばんケースなどですぐに持ち主がわかりますが、大会会場での忘れ物は皆目見当がつきません。名前がそろばんかそろばんケースに表示されていれば、すぐに教室の先生に連絡をつけて返却ができます。しかし、たいてい氏名の表示がないために、返却できない事態がよく起こります。

 ジャスミンフィールドの飯尾さんはすぐにいくつか試作をして、それを≪もんじゅ≫へ送ってくれました。ケースの布地には撥水のラミネート加工が施され、裏地との間に薄いクッション生地が入っています。機能性に加えて、「可愛い!でHAPPYに」を商品モットーとしている彼女は、それまでの無地や落ち着いた色のチェック柄ではない、可愛らしかったりカッコいい柄のデザイン性も重視していました。
 そこで、在庫が残っていた従来のケースと一緒に、新入会の生徒さんと保護者の方の前に並べて選んでいただくようにしました。すると、90%以上の方がそれらを見た瞬間に、お子さんか保護者の方のどちらかがジャスミンフィールド製のそろばんケースを手に取って、「こちらがいいです」と言います。それ以来、≪もんじゅ≫ではジャスミンフィールドさんのそろばんケースを仕入れて常備するようにしています。
 ジャスミンフィールド製のそろばんケースは、まずデザインで生徒さんたちの目を引きます。そして手に取ると、生地に厚みがあってフカフカ、裏地の柄までコーディネートされ、しかも全体が撥水加工です。撥水加工されたキルティング生地のものもあります。値段は千円ほど高くなりますが、従来のものと品質が違うのは一目瞭然です。確かな品質と手にした時のワクワク感のほうが勝ります。 
 写真のそろばんケースは、上が27ケタ用で、下が23ケタ用に新たに仕入れたものです。マカロンなどのスイーツ、不思議の国のアリス、クラッシックカー、宇宙、パンダ、リボン模様などの柄で、これらもお子さんたちが喜んで手にする姿が目に浮かびます。

 子どもの人口が減っている昨今、そろばんの魅力を伝えることにそろばん業界は頭を悩ませています。そろばんの突出した計算力や育脳機能を説明するだけでなく、お子さんたちにそろばんを好きになってもらうアイテムの1つとして、≪もんじゅ≫では使いやすくて可愛らしい、カッコいいそろばんケースをご紹介しています。

(高橋門樹)