高橋門樹が投稿した文章「中学全教科で使える英語力を」が、『朝日新聞』2019年2月2日(土)12ページ、オピニオン・ページに掲載されました。全文は上に貼付した資料写真の通りです。題名は新聞社の編集担当の方がつけました。(掲載されたページを写真に撮ってご紹介することも可能ですが、今回は読みやすさを優先して、ネット上に掲載された画面を写真にしました。)

 この文章は、私がふだんから娘が学校の宿題に自宅で取り組んでいるのを見ながら、日本の英語教育に対して考えていたことをまとめたものです。娘は国際バカロレア(IB)クラスという、英語のネイティブ教員たちに数学や理科、社会などの教科を教わる中学校のコースに昨年入学しました。日本の学校のIBプログラムの導入は、2013年に政府が200校で実施することを目標として掲げたグローバル教育政策の1つです。私立校以外にも、すでに国立付属校や公立校の一部で実施されています。
 そのクラスの授業では、教師がパワーポイントで画像・動画をふんだんに盛り込んだプレゼンテーションをします。生徒は配布された紙資料を読み、ワークシートに記述し、頻繁に数ページ分のレポートを書きます。たとえば、レポートでは次世代エネルギーについて論じたり、世界のサンゴ礁の保全方法について調べて意見を書いたりします。さらに、それを掲示用ポスターに作成して発表します。昨年の夏にはオーストラリア研修があり、ホエールウォッチングと同時に、現地の海洋生物に関する講義を受けてきました。
 これらすべてを英語で行なう娘の学校の学習活動を見ていると、日本人が外国人と議論を戦わすことは難しいと痛感します。英語力の問題ばかりではありません。通常、日本の学校の勉強では、教科書に関する先生の解説をノートに取り、言葉を暗記するだけで、生徒個々の体験を語ったり書いたりすることはほとんどありません。調べ学習と言っても、どこかのサイトの解説をそのまま写し取って書くだけで、自分の意見の表明とはまったく別物です。普段から自分で調べた情報や体験したことにもとづいて、独自の意見を求められる教育を受けてきた人に、自分の意見を持つこともなく暗記作業しかしてこなかった人が対等の議論をできるわけがありません。
 体験や調査にもとづいて英文を作成することは、ビジネスで言うところのOJT (On the Job Training)そのもので、その過程で高い理解と知識の定着が期待されます。ところが、日本の中高で行なわれる教科書英語の暗記では、実際にそれを使って話すことを目的としていないため、目前の試験対策の勉強としては使えても、実用にはなりません。日本の英語教育の新基準として4技能の習得が謳われていますが、今のまま日本の英語教育を続けても、英会話ができるようになるとは思えません。まして学習英語はなおのことでしょう。

 私が投稿文の中で「掛け算や割り算、分数でさえ、英語で表現したり理解したりできる人は、あまり多くないと思う」と書いたのは、わが家の教室≪もんじゅ≫で昨年から取り組み始めた英語読上げ算も関連しています。そろばんの読上げ算は、「願いましては~円なり、~円なり、引いては~円なり、加えて~円では?」と口頭で出題をして、生徒に計算をしてもらいます。この「~円なり」の部分が2ケタ数字ならいざ知らず、4~6ケタの「~万円」となるとすぐに読むことや聞いて理解することができるでしょうか。たとえば「123,456円」は英語で、“one hundred twenty three thousand four hundred fifty six yen”と読みます。
 全国珠算教育連盟神奈川県支部の一部のそろばん教師の先生方は、神奈川県に駐留する在日米軍の複数の小学校の生徒たちにそろばんを教えており、毎年開催する日米小学生そろばんコンテスト(日米双方からそれぞれ60~70名ほどの小学生が参加)を20年以上続けています。私が参加させていただいている同支部の英語読上げ算研究会の先生方は、ご自分の教室でも日ごろから一部のクラスで英語の数字を読み、聞き取った数字を生徒たちが計算する練習をしています。研究会ではそろばん用語の英語以外にも、算数用語も英語で勉強しています。
 ビジネス英語を長年指導されてきた西真理子さんは、著書『「英語を話せる人」と「挫折する人」の習慣』(明日香出版社、2015年)の中で、「ビジネス英語でまずやっておかないといけないこと」の不動のナンバーワンは、数字であると言い、売り上げや契約の金額など「ビジネスで数字を間違うのは致命的なミスです」と指摘します。小中学校でも出てくる掛け算、割り算、小数、分数ですら、日本の英語教育では英語でスラスラいえるほど練習をしていません。これでは、小学生と英語で算数の話もできません。英語の文学的な言い回しよりも、まず小中学生が使う程度の算数用語と万単位の数字の読み方くらいは習得しないと、いざ実用段階で困ってしまいます。
 ≪もんじゅ≫では、音読・書きとり、そろばん・暗算、個別指導の各コースで英語を取り入れています。外国語学習は音声から理解できるように、リスニングと発音を重視しています。上記の英語読上げ算のほか、音読・書きとりコースのテキストは幼稚園児向けから英単語や簡単な英語のフレーズの読み書きを取り入れています。個別指導コースでは、中学生に学校英語の補習だけでなく英検対策も行ない、小学生には英検ジュニアのテキストを使った読み書きをしています。昨年からは保護者様を対象にした大人の英語講座も始めました。ご興味のある方は、ぜひお問合せください。