昨年末に、わが家の教室≪もんじゅ≫から5キロメートルほど離れた小学校から、小学校3・4年生の「そろばん教室」の指導を依頼され、先月全クラス2回ずつの授業をしてきました。文科省で義務付けられている「そろばん」の授業です。≪もんじゅ≫は創立5年目にして初めての小学校での「そろばん教室」だったため、知り合いのそろばん教室の先生方に授業内容と方法をお尋ねしたところ、細かな部分については指導者に任せられているとのことでした。

 基本は『たのしいそろばん』(東京都珠算教育団体連合会発行)を使い、実技以外の部分は独自に授業内容を練りました。そろばんの歴史や文化的側面をパワーポイントなどで見せることにしました。また、今後も同様な依頼があった場合に備え、授業の最後に授業内容について生徒さん全員にアンケート票に回答してもらう方法で授業評価をしてもらいました。どの授業項目がわかりやすいか否か、また生徒さんたちが興味を持てる内容か否かを数値で確認して改善するためです。

 学校個別の情報でもあるので、ここですべての調査結果の詳細を明らかにはできませんが、両学年とも100名余りから回答をいただき、クラスごとに回答結果に差異はあまりありませんでした。当初は記述式で回答してもらうつもりでしたが、その小学校のボランティアコーディネーターの方から、「子どもは記述式だと書けなかったり考え込んでしまったりするので、選択肢で回答させるほうが確実です」と助言をいただき、アンケート票をそのように作成しました。

 アンケート票は「定位点、1珠・5珠、ケタ、ハリなど、そろばんの各部分の名前」、「そろばんの珠を動かし、そろばんの数字を読むこと」「そろばんでたし算とひき算をすること」「そろばんでかけ算とわり算をすること」などの授業内容を3・4年あわせて全13項目に分け、それぞれについて「おもしろかった」と感じたら○を、「わかりにくかった」と感じたら△を書き、どちらでもなければ無記入としました。集計した結果、すべての項目で、○の数が△の数を上回っており、安心しました。

 回答結果で意外だったのは、3年生のクラスで実演したフラッシュ暗算でした。これは他のそろばん教室の先生から「一番盛り上がりますよ」と教えていただき、私の授業でもノートパソコンを持ち込んでやってみました。教室では多くの子が「ハイ、ハイッ!」と元気よく挙手をして、正解すると教室中で歓声が上がりました。ところが、アンケートでこのフラッシュ暗算は、56%の生徒が○をした一方で、38%の生徒が△をつけ、3年生の授業項目の中で△の割合が最多でした。

 生徒さんたちに試させたフラッシュ暗算は、20~17級の1ケタ4口までの加減算でした。そろばんを習っていない子どもでも、計算が得意な子どもは大型モニター画面で次々に現れて消える数字は刺激的で楽しく参加できるレベルなのですが、計算が苦手な子にとっては劣等感や嫌悪感を抱くのかもしれません。級友たちの前で能力格差を明らかにしてしまうフラッシュ暗算は、学校での使用はあくまでも短時間のデモンストレーションにとどめるべきかもしれません。

 最も好評だったのは、10の合成を教える「10になるお友だち」でした。≪もんじゅ≫では、10を合成する補数を「10になるお友だち」と呼び、「1のお友だちは9」「2のお友だちは8」……「9のお友だちは1」と覚えてもらっています。これを模造紙大の大きさに拡大コピーして黒板に張り出し、みなに声を出して読んでもらいました。この「10になるお友だち」は○が86%、△が12%でした。リズムに乗って音読することの楽しさと同時に、小学3年生なりの10の合成に関する発見だったようです。

 「10になるお友だち」の音読をはさんで、繰上り・繰下りのある加減算をして、実際に補数の使い方を実習しました。アンケートでは「そろばんでたし算とひき算をすること」が、○67%、△32%でした。初めてそろばんを使った繰上り・繰下りのある加減算は、約3分の2の生徒が興味を示し、3分の1の生徒には難しかったことになります。もし更に数回の授業があれば、後者3分の1の子たちにもわからせてあげられるのに、と残念な思いも残ります。

 アンケート票は事前に校長先生に内容確認をいただいておいたので、これら授業評価アンケートの集計結果などは授業報告書としてまとめ、校長先生へ提出しました。その後、校長先生からは私の「そろばん教室」授業に関するご所見を書いたお手紙をいただき、次年度も「そろばん教室」の担当を継続してもらいたい旨を仰せつかりました。今後も授業内容や指導方法に改善を加え、近隣地域の小学生の学力向上にわずかばかりでもお力になりたいと思っています。