あいさつの話題は、各国それぞれです。昨日≪もんじゅ≫の個別指導で、中学生の夏休みの宿題の手伝いをしました。学校で配布された英語ドリルのマル付けと説明をしていたところ、英会話ではお決まりの「週末は楽しかった?」(ドリルのセリフは、“Did you have a good time last Saturday?”。写真)というセリフが出てきました。

 中学校の女性教諭と男子生徒の間の会話で、先生が「神戸へ行ったわ」と答えると、男の子は「何の買い物をしたの?」「先週末、ぼくは次のサッカーの試合で活躍するために、サッカーの練習を一生懸命したよ」と続けます。この男の子は大人の女性に向かってプライベートなことを尋ねた次には、自信たっぷりに自分のことをアピールしています。

 日本で暮らしたことのある外国人が日本人に抱く疑問には、「なぜ日本人はすぐに天気のことを話題にするのか?」があります。「今年は猛暑ですね」「雨降りばかりで、もうイヤになってしまいます」などを、会話の切り出しに使います。乾燥して降雨が少ない大陸とは違い、海に囲まれて温暖湿潤、四季が明確な島国の日本では、気候を話題として取り上げるのは自然です。

 私が2年間住んでいた中国であいさつの定番は、「ご飯を食べた?(吃飯了嗎?)」でした。慣れない外国人の中には「なぜ自分の食事のことを人に話さなければいけないのか?」と、中国人に疑問をぶつける人もいました。中国人はキョトンとして、「そんなに深刻な話ではないよ。ひと言“食べたよ”と答えてから、他の話題に移ればいいだけ」とのことでした。

 休暇を楽しむ文化をもつ欧米人は、短い週末の休みでも楽しまなければ損だと思う傾向があるのでしょうし、雨具を用意するか否かを毎朝判断する日本人に、詳細な天気予報は不可欠です。また民族の興亡が繰り返され、つい半世紀ほど前にも政治的な要因で大量の餓死者をだした中国では、生存のための食事にありつくことが国民的関心事なのでしょう。

 言語を勉強するのは、言葉そのものにとどまらず、その言葉を話す民族の文化や思想、気候や歴史などの勉強にもつながります。世界を知る手近な入口として、語学学習を考えることができるでしょう。そして、どの語学学習でも最初の会話文で出てくるのは、あいさつです。どのようなあいさつをしているかで、その国の民族性と価値観がわかります。

(高橋門樹)