第37講 ハロウィンの起源と日本

 近年、すっかり日本にもハロウィンが定着しました。でも、ハロウィンが元はヨーロッパ・ケルト人の風習から始まったことをご存知ですか? それが日本に定着するまでを、以下にまとめてみました。
 ハロウィンの起源は、紀元前からヨーロッパ中西部に住んでいたケルト人の習慣にあります。ケルト人の暦では1年の終わりが、収穫の終わる秋の10月31日でした。その夜から翌11月1日の朝までは、死者の魂がこの世にやってくると考えられ、祭りをしていました。あの世からやって来た魂が生きている人たちに不幸をもたらさないために、ごちそう(treat)を供えるのです。日本でご先祖様を迎えるお盆と悪霊払いの節分をあわせた意味合いを持つ行事です。

 現在では、子どもたちがお化けのコスチュームを着て家々を回り、「トリック・オア・トリート?」(trick or treat?)と言ってお菓子をもらいます。「お菓子をくれないと、イタズラしちゃうよ」と可愛らしい日本語に訳されますが、ケルト人の祭りの中では幽霊が「私をごちそうでもてなさないと、おまえたちに災いをもたらずぞ」(Treat me, or I will trick you)とおどす言葉でした。現代では微笑ましい子ども向けの童話が、実は怖い伝説だったということは、よくあることですね。

 後にケルト人の居住地域にキリスト教が入り込みました。キリスト教はケルト人たちの習慣を無視できず、ケルト暦の新年にあたる11月1日を「オール・ハロウズ:All Hallows」(諸聖人の日)として祭日にしました。「ハロウィン」(Halloween)という言葉は、ここに由来しています。この11月1日と10月31日の祭りが合わさって、10月31日のハロウィンとなっていきました。

 このヨーロッパの特定の地域の習慣がアメリカで定着したのは、漫画「ピーナッツ」(Peanuts:スヌーピーが出てくるマンガ)とディズニー映画の影響でした。1951年に「ピーナッツ」でチャーリー・ブラウンが「トリック・オア・トリート」と叫んで、友人の家のドアを叩きました(添付画像)。そして1952年には映画「ドナルドの魔法使い」(原題:Trick or Treat)が放映されました。アメリカの国民的コミックとアニメが同時期にハロウィンを取り上げたことで、一気にアメリカ社会に「トリック・オア・トリート」が広まりました。

 日本ではハロウィン・イベントの先駆けとして、1983年に原宿の玩具等販売店キデイランドが、1997年に川崎の映画館チネチッタがパレードを始めました。現在どちらも国内最大規模のハロウィン・パレードとなっています。また、東京ディズニーランドは1997年に10月31日限定のイベント「ディズニー・ハッピー・ハロウィーン」を開催、それ以来、期間や内容を年々拡大して開催しています。大阪のUSJ、長崎のハウステンボスなどでも10月にハロウィン・イベントを開催し、若者を中心にハロウィンが広がっています。

 日本人はクリスマスやバレンタインなど、欧米文化を取り入れて楽しい年中行事にすることが得意です。しかし、ただの商業主義に乗ったイベントとして楽しむだけはもったいないです。たくさんのハロウィン・スウィーツをもらって楽しい時間を過ごしたら、その文化的起源を学ぶ機会も持ち、より深みのある国際交流や教養につなげてもらいたいものです。

(高橋門樹)